100年以上の歴史を持つ老舗製缶会社の側島製罐(愛知県海部郡大治町)が、相次いでヒットを飛ばしている。同社はBtoB事業に長年専念してきた町工場だが、斬新なコンセプトで個人顧客のハートをつかむことに成功。そのヒット秘話を同社6代目(予定)に聞いた前編に続き、後編ではヒット商品を生み出す原動力となった「MVV」づくりに迫った。

▼前編はこちら 100年企業のヒット商品開発術 空っぽの「缶」が2970円で売れる
100年以上の歴史を有する製缶会社、側島製罐。ヒットを飛ばす同社の原動力を探っていくと、苦労の末に策定にたどり着いたMVVの存在があった
100年以上の歴史を有する製缶会社、側島製罐。ヒットを飛ばす同社の原動力を探っていくと、苦労の末に策定にたどり着いたMVVの存在があった

 物をつめたり運んだりするための“脇役”だった缶に価値を付加し、ヒット商品を生み出した老舗製缶会社の側島製罐。斬新な商品を生み出した背景を探っていくと、新たに策定したMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)の存在が大きいことを前編で紹介した。後編の本記事では、MVV策定時点まで遡り、ヒットを生み出す組織づくり、仕組みづくりを探っていく。

 BtoC参入前の側島製罐は、そもそもMVVどころか経営理念そのものが定められていないに等しい状況だった。「前職の日本政策金融公庫では『政策金融の的確な実施』という明確な経営理念の下で働いてきました。経営理念の不在には当初から違和感を覚えていました」と、6代目(予定)の石川貴也氏は家業である同社に入社した2020年当時を振り返って語る。

 さらに、石川氏は社内の険悪なムードにも危機感を抱いたという。00年以降、製缶業界ではお中元・お歳暮の需要が落ち込み、側島製罐の売り上げは右肩下がりだった。業績悪化が続くとがんばっても報われない状況が生まれ、社員の不満が募っていった。

 入社したばかりの石川氏は、問題解決に向けた全社的な業務改革を社長から託されるが、早々に行き詰まる。さまざまな施策を打ち出しても、社内の士気は一向に高まらなかったのだ。

 「改革の理由を説明すれば、一応の理解を社員は示してくれました。しかし、理解とやる気は別物です。生産性向上や品質改善といったビジネスライクな理由では、社員のやる気に火が付きません」(石川氏)

 突破口を模索する石川氏がたどり付いたのが、入社当初から違和感を覚えていた経営理念の不在だった。そして、問題解決の糸口として、経営理念のフレームワークにあたるMVVに注目。石川氏は「MVVが共有されていれば仕事の軸が『ビジネス』から『思い』に移ります。“やらされ感”が解消されるため、改革に対する前向きなマインドが生まれるはず」と語る。

頓挫しかけたMVV策定プロジェクト 再始動でつかんだ突破口

 そんな中、21年1月にはMVV策定プロジェクトを始動。石川氏は1人でつくり上げたMVVのプレゼンを行ってキックオフした。しかし、周囲の反応は思いも寄らぬものだった。

新年の全社会議に大勢の社員に集まってもらってMVVを発表。しかし、失敗に終わった
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