BtoB市場では数十円から数百円程度が相場といわれる“缶”。この地味な商材を個人向けに10倍以上の価格で販売し、話題を集める企業がある。愛知県海部郡大治町にある老舗製缶会社、側島製罐だ。2022年5月に発売した「子供の思い出専用缶」がブレーク。BtoB企業だった同社がなぜ個人向けにチャレンジし、そしてヒットを生めたのか――。その秘密を同社6代目(予定)の石川貴也氏に聞いた。

「子供の思い出を大事にしまう専用缶」というコンセプトを持つ収納インテリア「Sotto」が話題に。生みだしたのは、創業100年以上の老舗製缶会社。斬新な“缶カン”が生まれた理由とは
「子供の思い出を大事にしまう専用缶」というコンセプトを持つ収納インテリア「Sotto」が話題に。生みだしたのは、創業100年以上の老舗製缶会社。斬新な“缶カン”が生まれた理由とは

 「缶」といえば、包装資材の一種。金属でつくられており、高い耐久性を持つ。さらに、劣化の要因である光、空気、湿気などの影響を防げるため、食品パッケージなどに広く利用されてきた。

 そんな缶にはもう1つの“顔”がある。中身が消費された後、収納グッズとしての2次利用の役割。思い出の品など大切な物の長期保管にうってつけというわけだ。

 特に、フィクションのワンシーンを見れば、缶の2次利用は日本では比較的ポピュラーな生活文化だと分かる。例えば『こちら葛飾区亀有公園前派出所』『20世紀少年』『東京卍リベンジャーズ』など、様々な大ヒット漫画の重要シーンで思い出の品をしまった缶が描かれてきた。

 つまり、缶とは、包装資材というコモディティーでありながら、日本の生活文化では一種の“宝箱”として活用されてきた。そんな中、「缶=宝箱」という消費者インサイトに注目して商品開発を進めているのが、明治創業の製缶会社・側島製罐(愛知県海部郡大治町)だ。2022年5月、自社ブランド事業の第1弾商品として「子供の思い出を大事にしまう専用缶」というコンセプトを持つ収納インテリア「Sotto(ソット)」を発売した。

 想定されている収納品は、おしゃぶり、ファーストシューズ、へその緒、病院のリストバンドなど、我が子にまつわる品々。自社製造の缶にフィンランド調のイラストをプリントしたかわいらしいデザインが特徴的だ。

「Sotto」に思い出の品を入れた様子のイメージ。缶の商品デザインはフィンランド人のエヴェリーナ・ネッティさんに依頼した。3色展開で、色ごとにデザインと商品名が異なる。青が「TUPA(コテージ)」、黄が「JARVI(湖)」、赤が「METSA(森)」と、それぞれがフィンランド語の商品名を持つ
「Sotto」に思い出の品を入れた様子のイメージ。缶の商品デザインはフィンランド人のエヴェリーナ・ネッティさんに依頼した。3色展開で、色ごとにデザインと商品名が異なる。青が「TUPA(コテージ)」、黄が「JARVI(湖)」、赤が「METSA(森)」と、それぞれがフィンランド語の商品名を持つ

“缶カン”を相場の10倍超で売る! 製缶業界の革命児

 「Sotto」の価格は2970円(税込み)。「業界では常識外れの強気価格」と説明するのは、自社ブランド事業の取りまとめ役を務めてきた石川貴也氏だ。側島製罐の現社長の息子で、6代目にあたる。

側島製罐6代目の石川貴也氏(22年9月、東京ビッグサイトで開催された展示会にて)
側島製罐6代目(予定)の石川貴也氏(22年9月、東京ビッグサイトで開催された展示会にて)

 包装資材として缶に費やすコストは、製品全体のうちで数百円程度を占めるのが通例。「製缶業界では値下げが競われてきました。3000円近くで“缶カン”を売ろうなんて、かなり酔狂な試みなんですよ」と、石川氏は語る。

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