農機や建機など、さまざまな産業機械を製造・販売するヤンマーホールディングスが、デジタルマーケティングを強化している。マーケティングオートメーションツール(以下、MAツール)の導入で、営業活動を効率化した。さらに2020年4月に、Web接客ツールを導入。自社サイトに訪れた潜在顧客を適切に必要な情報へと誘導するシナリオ設計で、潜在顧客にアプローチし、サイト全体のコンバージョン数を1.2倍に増やした。
初めて訪れたECサイトで商品ページを見ていると、ポップアップ(小さな画像)がブラウザー上に表示される。画像には「今すぐ会員登録していただければ、1000円割引のクーポン付与」の文字。お得に買い物できるのならばと、画像をクリックして会員登録に進んだ――。
サイト訪問者の行動を検知し、適切なタイミングで情報を表示して、購買を促す。いわば、Web上の“接客”ともいえる施策を実施できるツールが、Web接客ツールだ。その名称から、BtoC(消費者向け)商材の販売促進ツールという印象を受けるが、それ以外の業種でも工夫次第で効果的に活用できる。
農機や建機など、さまざまな産業機械を製造・販売するヤンマーはWeb接客ツールを活用して、Webサイト全体のコンバージョン数を1.2倍に増加させた。同社におけるコンバージョンとはカタログダウンロード、販売拠点の検索、問い合わせを指す。
BtoB(企業向け)商材の多くは、比較・検討期間が長期にわたることが多い。見込み顧客は購入を検討している機械などの情報を企業サイトでじっくり見て検討し、候補を絞り込んでから、問い合わせをして営業担当者との具体的な商談に進む。Webサイトは、BtoB企業にとっても、見込み顧客との最初の接点として重要性が増している。
ただ、ヤンマーのようにさまざまな業種向けに機器を製造・販売する企業の場合、各製品のカテゴリーや製品ごとにページを設けるため、Webサイトのページ数が膨大になりがちだ。結果、Webサイトの構造が複雑になり、サイト訪問者は迷いやすくなる。だからこそ、サイト訪問者が欲している情報へと速やかに導くために手助けすることで、問い合わせにつながる可能性を高められる。
ヤンマーはWeb接客ツールの活用でサイト訪問者を迷わせないための “接客”を実現し、見込み顧客の獲得数を増やしている。
船舶部門でMA導入が奏功し、デジマ本格化
ヤンマーは2016年のWebサイト刷新を機に、デジタルマーケティングを強化し始めた。だが、すぐには浸透しなかった。BtoB企業の多くは、営業担当部門が会社の売り上げをつくっているという自負がある。これまでの売り方に変化を及ぼすことを、素直に受け入れてもらえないケースは多い。
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