第三者への商品・サービスの推奨度を示す「NPS(ネット・プロモーター・スコア)」は、日本でも経営指標の1つとして普及している。ただし、必ずしも“万能”ではないことを示す調査結果が発表された。プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の敏腕マーケターが創業したコンサルティング会社M-Force(東京・渋谷)が実施した6カテゴリー、54ブランドを対象とした調査で、NPSは市場シェアの推移との相関性が最も低かったのだ。顧客のNPSが高くても、本人が当該ブランドを選ぶかどうかとはほぼ無関係であることを表している。

(写真/Shutterstock)
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 54ブランドを対象に2020年12月を基点として半年後、1年後の金額をベースに算出した市場シェアと複数のマーケティング指標の相関性を比較した結果、NPSは最も相関性が低い結果となった――。

 M-Forceが1年にわたり実施した調査から、こんな結果が浮かび上がってきた。「NPSは商品やブランドの第三者への推奨度を示す指標だが、人に薦めるからといって、本人が買うわけではない。そんな消費者心理が、調査結果となって表れたのではないか」。M-Forceディレクターの竹中野歩氏はこう分析する。

 この調査を深掘りする前に、NPSについて簡単におさらいしておこう。NPSを一言で言い表すと、商品・サービスの推奨度だ。近年、SNSの普及によって、消費者の発信力が高まり、SNSでの口コミの購買に与える影響が増している。企業発信の情報よりも、友人や知人、特定分野に詳しいインフルエンサーなど、信頼のおける第三者の声が購買を喚起する時代といわれる。

 NPSはそのような他人に対する商品・サービスの推奨意向を定量的な数値として算出するマーケティング指標の1つだ。消費者調査を通じて、0から10までの11段階で調査対象の商品やサービスの推奨意欲を回答してもらう。回答者のうち9~10点を付けた人(推奨者)の割合から、0~6点を付けた人(批判者)の割合を引き算した値でNPSを算出する。

 商品・サービスの購入者自身の満足度を超え、さらに人に推奨できる商品・サービスであるという、もう一段高い視座のデータを取得することで、顧客のロイヤルティーを測ろうという意図がある。NPSが高ければ、口コミによって客が客を呼び、結果として売り上げも伸びるという理屈で、企業への導入が進んだ。ところが、M-Forceの調査では、推奨する本人が継続的に対象の商品・サービスを購入するか否かとは無関係という結果が出た。

満足度、好感度、NPS…指標乱立を課題視

 「NPS、認知度、好感度、満足度など、企業が事業成長を予測するための指標が乱立しており、非常に不便だと感じたのが調査実施を思い立った発端だ」と竹中氏は言う。M-Forceが実施した調査は、そうした複数の指標と市場シェアの推移の相関性を比較。有効な先行指標を見つけ出し、マーケターがKPI(重要業績評価指標)として追うべき優先順位付けをしやすくする示唆を与えることが目的だ。

 調査は「ビール」「緑茶」「エナジードリンク」「部屋用消臭芳香剤」「シャンプー」「袋麺」の6カテゴリーで9ブランド、計54ブランドを対象に、調査会社のマクロミルと共同で実施した。「今回は研究が目的だったため、市場シェアの変化が見えやすく、比較しやすいカテゴリーを選んだ」と竹中氏は説明する。

 各ブランドの市場シェアを算出するデータには、マクロミルの消費者購買履歴データ「QPR」を活用した。QPRは全国3万人の消費者パネルに小型のバーコードスキャナー、またはスマートフォンで購入した商品のバーコードを読み取ってもらうことで、購買データを蓄積している。調査では各カテゴリーで1000サンプルを対象に、全ブランドの市場シェアを金額と数量ベースでそれぞれ算出。20年12月、21年6月、21年12月の3回にわたって算出し、推移を分析した。

 この市場シェアの算出と並行して、対象ブランドに対する認知度、満足度、好感度、NPS、そしてM-Forceが開発した独自指標「NPI」をマクロミルの調査パネルへのアンケートで各カテゴリー1000人ずつ取得。市場シェアの推移との相関性を比較した。

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