リアルな人間を模した外見、そして人間らしい応対をする「デジタルヒューマン」。メタバース時代の到来に向けて、進化が著しい。実際の著名人をデジタルヒューマンとして“売り出し”、広告に起用する事例も既に出てきている。デジタルヒューマンの進化がどうビジネスや生活を変えるのか、追った。
メタバースを語るうえで、欠かせない要素として「デジタルヒューマン」が挙げられる。メタバースが普及した将来、3次元インターネット空間で私たちは3Dアバターを通じて互いにコミュニケーションを取るようになる。
他方、機械(AI=人工知能)もアバターを通じて、私たち人類との対話を試みる。新たなコミュニケーションや生活の変化が起きるはずだ。本記事では、デジタルヒューマンがもたらす新たな価値を、未来考察と参考事例を織り交ぜながら見ていきたい。
「デジタルヒューマン」とは、3D技術を用いて、再現性の高い表情や身体の動きを行えるように生成されたアバターを指す。ときには私たち自身を高性能な360度カメラなどを用いて撮影し、私たちの姿、形を3DCGで再現した「デジタルツイン」が使われることもある。
アバターの操作主が機械の場合、自然言語処理や機械学習を使った会話ロジックを用いて、私たちのサポート役や分身として振る舞う。一方、操作主が人の場合、私たちはアバターを通じてメタバース空間を探索し、メタバースならではの体験を楽しむ。
デジタルヒューマンは決して“3Dアバター”である必要はない。テキストベースのチャットボットや機械による音声ガイドなど、その媒体は様々だ。いずれの場合もこの記事では分かりやすいように「デジタルヒューマン」と統一して表現する。
今の私たちにとって、デジタルヒューマンは生活の中でほとんどなじみがないかもしれない。しかし、既に広がりつつある。例えば直近では、モデルの冨永愛氏のデジタルツインが、三菱地所レジデンス(東京・千代田)と直接広告契約を締結し、新築分譲マンション「ザ・パークハウス」の仮想空間「SUPER MODEL ROOM」の広告にキャスティングされた。また、相模鉄道(横浜市)とAIスタートアップのデータグリッド(京都市)が「デジタルヒューマン」を活用したプロモーションの実証実験を始めた事例もある。
ここからはデジタルヒューマンの活用について、「機械」が主語のケースと、「人」が主語のケースでそれぞれ紹介していく。
メタバース空間ではAIアバターが同僚に
メタバースで働くことはしばしば「MetaWork」と呼ばれる。将来的には、3次元空間上のオフィスへ出社し、世界中どこからでもアクセス可能な仕事環境で、実世界同様に働き、同僚たちとコミュニケーションを図る時代も来るだろう。米メタ(旧フェイスブック)が発表した「Horizon Workrooms」は、まさにそんな世界観を表現している。
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