かつて、「一家に1台」といわれるほど普及していたミシン。市場が縮小傾向の昨今において、そんな流れをものともせず、ヒット商品を連発している中小メーカーがある。アックスヤマザキ(大阪市)だ。新機軸の子ども用ミシンは人気爆発で品切れ店が続出。子育てをする親向けのミシンもヒットしている。なぜヒットを生み出せたのか、同社社長の山﨑一史氏にアイデアづくりの方法や商品開発のコツについて聞いた。

アックスヤマザキ社長の山﨑一史氏。祖父が創業したミシンメーカーの3代目として2015年に社長に就任。新機軸の商品を生み出す同社の企画術、商品化の裏側に迫った
アックスヤマザキ社長の山﨑一史氏。祖父が創業したミシンメーカーの3代目として2015年に社長に就任。新機軸の商品を生み出す同社の企画術、商品化の裏側に迫った

 国内の家庭用ミシンの推定販売台数は、1995年ごろから2019年にかけて3分の1以下になったといわれる。そうした縮小傾向が続く市場で、アックスヤマザキも長年苦戦を強いられてきた。

 90年代、同社は生産の大半がOEM(相手先ブランド生産)で、99年までは順調に販売を伸ばしていたが、そのOEMの大口取引先が事業解散するなど、市場も右肩下がりになる中で業績が悪化。一旦は他社に就職していた山﨑一史氏が父である先代の声かけもあり家業に戻ってきた2005年には、同社の経営は瀬戸際に立たされていた。

アックスヤマザキは、1946年に家庭用ミシンを製造する専門メーカーとして創業
アックスヤマザキは、1946年に家庭用ミシンを製造する専門メーカーとして創業
創業以来、大阪市生野区に本拠を構える
創業以来、大阪市生野区に本拠を構える

 「入社当初はとにかく立て直そうと、自社ブランドの開発と新規顧客開拓を推し進めた」(山﨑氏)という。ただ、開発では「競合がこの機能だから、うちは機能を少し変えたりおまけを付けたりする」といった、消極的な姿勢が基本だった。当然、差異化はままならず、価格競争に巻き込まれることになる。営業も他社と同じような機能(少し良い機能)を持った商品をとにかく安く売る方針。「私も含めて営業で駆けずり回り、売り上げは何とか持ち直す場面があった。だが、利益率はどんどん下がり、このままではじり貧になることが目に見えていた」(山﨑氏)。

ミシン離れの一因は小学校時代の苦手意識?

 こうした経営問題に加え、山﨑氏が取引先販売店の店頭に立ち、営業で走り回る中で肌で感じていたのが、予想以上にミシン離れが起こっているということ。「ミシン自体を購入する人が減る中、たいした差異化もない我々のような弱小メーカーのミシンを、販売店はわざわざ扱う理由が見当たらず、営業も苦しい場面が増えた」と山﨑氏は振り返る。自分たちがつくる物は必要とされていない――。山﨑氏も含め、社員たちは厳しい現実を前に、将来性に明るさを見いだせずにいた。

 だが、山﨑氏は決して諦めていたわけではなかった。日々、自分の周りの知人・友人にミシンの課題や要望などをじかに聞いていったり、小さい子どもを持つ親を数人集めてミシンについて自由に話す場を設けたりして、窮状を抜け出すヒントがないかと必死に探し回っていた。

身近な人や、ユーザーへの直接のヒアリングを繰り返すスタイルを今なお続け、商品開発・改良に生かしている。家族にもヒアリングをし、生活の中に潜む課題が無いのかを徹底的に洗い出す(画像は子育て世代へのヒアリングの様子)
身近な人や、ユーザーへの直接のヒアリングを繰り返すスタイルを今なお続け、商品開発・改良に生かしている。家族にもヒアリングをし、生活の中に潜む課題が無いのかを徹底的に洗い出す(画像は子育て世代へのヒアリングの様子)

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