次世代のエンターテインメントをけん引すべく、LDH JAPAN(東京・目黒)とサイバーエージェントが手を組み、動画配信プラットフォームの開発をはじめとした、デジタル戦略に力を入れている。2社で共同出資会社をつくり、動画配信サービス「CL(シーエル)」を開発。アーティストとファンの交流の場として、熱量を高めていることが、継続的なライブの動員につながっている。デジタルの導入によって変化するエンターテインメントのあり方とファンコミュニティーについて、EXILEのSHOKICHI氏と合弁会社CyberLDH(東京・渋谷)取締役の山内隆裕氏に聞く。
EXILEをはじめ、多数のアーティストを抱えるLDH JAPANがデジタル戦略に力を入れている。2019年にサイバーエージェントとの合弁会社CyberLDHを設立し、20年に動画配信サービスCLを提供開始した。LDH所属アーティストのコンサートの動画配信や、所属アーティストによる生放送配信などを、月額サブスクリプション(定額課金)制で楽しめるサービスだ。
コンサートのライブ配信やメンバーのキャラクターを生かした番組の配信に加え、アーティストの「ライブキャスト配信」が特に人気だという。ライブキャスト配信の特徴は、視聴者が複数のエリアに分けられる点にある。そのエリアをアーティストがわたり歩いて、視聴者から寄せられるコメントを読んでいく。1カ所に大人数が集まると、コメント数が多くて流れていってしまう。少人数ごとに分けられたエリアでコメントするため、アーティストに自分のコメントが読まれやすくなり、親密度があがる。
こうした工夫を機能に実装することで、会員であるファンとのエンゲージメントを高め、その熱量がSNSを通じて拡散されるようなプラットフォームの形を目指しているという。音楽業界におけるデジタルの優位性は、より深いエンゲージメントの創出と拡散性にある。CL運用の中で見えたデジタルによるコンテンツづくりの変化や施策が、ファンとの交流にどのような効果をもたらしているのだろうか。
――音楽業界にデジタルを取り入れることの価値は、どのような点にあると捉えていますか。
山内隆裕氏(以下、山内) 現代の音楽業界では、以前のようにテレビではやったものをみんなで聞くというよりは、ストリーミングサービスやSNSに人が集まって、言語などの壁を越えてコンテンツがグローバルに広がるのが主流になりつつあります。曲をつくる労力は同じままで一気に広められるため、デジタル活用は不可欠です。
また、アーティストがいつ何をしているかを知ることができたり、リアルタイムでやりとりできたりすると、ファンとアーティストの距離が近くなり、強力で深いエンゲージメントをつくれるようになっています。エンゲージメントが深いファンは、周囲に広めたいという熱量を持っています。そうしたファンがSNSなどを使って発信することで、熱量が何倍にもなって広がっていく。強力な「推しの文化」ができていますよね。
――LDH JAPANとしてデジタルの重要性に気づいたのは、どの時点からですか。
SHOKICHI氏(以下、SHOKICHI) YouTubeの再生回数などで、順位をつけられるようになってからじゃないでしょうか。それまではCDの売上枚数などで評価されていたことが、大きく変わりました。でも、今の若い子たちはそれが当たり前の世界に生きているので、そうした感覚と僕たちが大切にしてきたライブなどの生の感覚をミックスできたら最高だなと思います。
これはLDHの強みだと思いますが、LDHはYouTubeなどのデジタルの数字とライブの動員数がマッチしてないんですよ。今ぐらいのデジタル上の数字でこの規模のライブを行えるのは、ライブをとことん追求してやってきたからこそだと思います。もちろん再生回数なども常に気にしていますが、LDHが一番意識しているのは今でもライブ動員数です。デジタルの数字を上げることで、ライブに来てもらえるようにするという発想も今後は大切かもしれないですね。
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