三井住友銀行は金融機関ながら2016年からデザインチームがある。なぜデザインを重視し、社内でどう位置付け、活用しているかなどを、デザインチームを統括するリテールIT戦略部長の中村裕信氏らに聞いた。
中村裕信氏(以下、中村) 銀行はメーカーなどと異なり、一見するとデザインとは遠い存在にあるように思われるかもしれません。しかし当行はデザインの持つパワーを重視し、2016年からデザインチームを段階的に強化してきています。背景にはデジタル社会の進展がありました。金融機関には幅広いお客さまが存在し、中にはネットバンキングなどのデジタル機能に不慣れな方もいらっしゃいます。そうした方にもデザインの力を借りて、慎重かつ丁寧に、我々のメッセージを伝えたい。金融機関としての社会的使命を果たし、お客さまから変わらず信頼される銀行であり続けるためにも、デザインの役割はますます高まっていくと思います。
我々のデザインへのこだわりの1つがグッドデザイン賞への取り組みです。あらゆる業種の先進的で実用的な商品・サービスのデザインと同じ目線で、銀行のサービスをお客さまに届けたい。そのような思いから、デザインチームの発足後、グッドデザイン賞に継続的に応募し、受賞できています。19年度はスマートフォンアプリの「三井住友銀行アプリ/三井住友カード Vpassアプリ」で獲得。21年度は個人のお客さま向けサービスとして、三井住友銀行アプリやホームページ、インターネットバンキング「SMBCダイレクト」、対面サービスの際に利用する端末「SMBCタブレット」などが1つにつながって提供する顧客体験「いつだってすぐそばに、SMBC」で受賞しました。デジタル化の進展はもはや当たり前ですから、アプリ開発などにとどまらず、デザインの活用をもう一段、進化させたいと考えています。
チームのビジョンとして、「日常は使い勝手よく、困っているときは頼りになる存在でありたい」という点を強く意識しています。いつでもどこでも金融サービスを受けられ、何かあったときには相談できる、こうしたことをデジタルやデザインを介し、体験できるようにしていきたい。そして、銀行が変わってきていることを、お客さまにはデザインで実感してほしい。さまざまなサービスを通じ、我々の世界観をデザインで「見える化」できるようにしたいですね。
今後もさまざまなサービスを新たに出していきますから、デザインチームを拡大し、さらにデザイナーを採用していく方針です。デジタルの進展に常にアップデートでき、柔軟でスピーディーなデザインチームにしていきます。我々の考え方に共感し、賛同していただけるデザイナーを迎えたいと思っています。
行内の意識改革にもつなげる
――どんな領域のデザイナーがいるのですか中村 22年5月時点では7人おり、さまざまな領域のデザイナーがいます。例えばUI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)やWeb関連、サービスデザインを手がけてきたデザイナーもいます。今後、その幅をさらに広げていきたいと思います。
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