アパレル産業は、大量生産・大量廃棄により環境破壊に多大な影響を与えているとされる。そんな中、今熱い視線が注がれているのが、小ロット生産を可能にするデジタルプリントやプリントオンデマンドなどの印刷技術だ。既存のアパレルブランドのみならず、ビジネス機会を見いだした異業種からの参入も始まっている。サステナビリティー(持続可能性)への貢献と、収益化の可能性を秘めたアパレル産業のデジタルプリント活用、その実態は?

 従来のアナログプリントは、一度「版」を作製してしまえば、同様の商品を多数作れるため大量生産型の製造方法には適していた。一方、小ロット生産や個別受注生産の場合は、版の作製費を販売枚数で回収しにくいことから、製造コストが割高になりがちだった。

 しかし昨今、個人でも利用しやすい、低価格で簡単にECサイトを構築できるプラットフォームの出現や、また企業の中でも新規事業としてD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランドを立ち上げる動きなどもあり、小ロットでの製造ニーズが高まっている。こうした状況下で注目を集めているのが、印刷版を使用せず、データから直接出力する「デジタルプリント」だ。

プラザクリエイトがアパレル事業に参入

 写真プリント店舗「パレットプラザ」や、DIYキットブランド「つくるんです」を運営するプラザクリエイトは、2022年7月、アパレル事業に参入すると発表した。22年秋、東京・渋谷にプリント工房とカフェが融合した新拠点「CREATIVE PLAZA HATTO」をオープン予定。店舗内には、パートナーとして迎えるイスラエル発のスタートアップ、Kornit Digitalが開発する、水を使わないサステナブルなデジタルプリンター「Atlas MAX(アトラス マックス)」を備えるという。

 アトラス マックスは、ポリエステルおよびポリエステル混紡のアパレル製品に、鮮やかでカラフルなデジタル装飾を施せる。CREATIVE PLAZA HATTOには、3次元表現が可能なTシャツ用の大型デジタルプリンターが置かれる予定だ。なおKornit Digitalは、プリント用のクラウドサービス「Kornit X」も提供しており、同サービスを利用することで、印刷工場は注文受付からプリントされるまでの工程をデジタル上で管理可能となる。

 
Kornit DigitalのAtlas MAX。仕立て済みの服に小ロットでクオリティーの高い立体プリントや、糸を使わない刺しゅう風プリントができる
Kornit DigitalのAtlas MAX。仕立て済みの服に小ロットでクオリティーの高い立体プリントや、糸を使わない刺しゅう風プリントができる

プリントオンデマンドアパレルは海外で先行

 プラザクリエイトがKornit Digitalとタッグを組み、アパレル事業に参入する目的の1つは、アパレル産業の環境破壊軽減にある。

Kornit Digitalのプリンターを使った刺しゅう風のプリント
Kornit Digitalのプリンターを使った刺しゅう風のプリント

 発展途上国の経済開発と貿易の促進を目的に設立された国際連合総会の補助機関「国連貿易開発会議」によると、アパレル産業は石油業界に次ぎ、世界第2位の汚染産業だという。同会議が指摘するには、ジーンズ1本を作るためだけに約7500リットルの水が消費され、衣料品と履物の製造は全世界の温暖化ガス排出量の8%を占める。さらに、毎秒ごみ収集車1台分に相当する繊維が埋め立て・焼却されているとする。

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。

有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>
10
この記事をいいね!する