あいおいニッセイ同和損害保険(東京・渋谷)が、2021年4月からデータ活用プロジェクトを立ち上げ、同社が蓄積する自動車走行データを活用した事業の強化に動いている。同社が22年から主に自治体向けに提供する「交通安全マップ」は、個人を特定・識別せずに、危険な運転が発生した場所や時間帯、運転手の年代などを分析できるのが特徴だ。あいおいニッセイ同和損保が目指すデータ活用の姿を追った。

あいおいニッセイ同和損害保険(東京・渋谷)が蓄積してきた自動車走行データを、LayerX(レイヤーX、東京・中央)が提供する個人情報保護技術「Anonify(アノニファイ)」を使って分析し、日時や時間帯の条件などで絞り込んで、危険な運転が発生する地点を示した。黒枠で囲われた道路上の赤い四角が危険な運転が発生する地点(出所/あいおいニッセイ同和損害保険、LayerX)
あいおいニッセイ同和損害保険(東京・渋谷)が蓄積してきた自動車走行データを、LayerX(レイヤーX、東京・中央)が提供する個人情報保護技術「Anonify(アノニファイ)」を使って分析し、日時や時間帯の条件などで絞り込んで、危険な運転が発生する地点を示した。黒枠で囲われた道路上の赤い四角が危険な運転が発生する地点(出所/あいおいニッセイ同和損害保険、LayerX)

 あいおいニッセイ同和損害保険は、「テレマティクス自動車保険」を損害保険業界の中で早期に導入した先行組だ。テレマティクス自動車保険とは、クルマのスピード、運転手によるブレーキやアクセル操作、位置情報といったデータを、主に車載端末を使って取得し、運転手の運転特性を分析して保険料に反映させる保険。簡単に言えば、安全に運転する運転手は保険料が割り引かれて安くなるというメリットを得られる。

あいおいニッセイ同和損害保険のテレマティクス自動車保険に加入した運転手は、ドライブレコーダーを車載端末として、運転席の前方部分などに搭載する(出所/あいおいニッセイ同和損保)
あいおいニッセイ同和損害保険のテレマティクス自動車保険に加入した運転手は、ドライブレコーダーを車載端末として、運転席の前方部分などに搭載する(出所/あいおいニッセイ同和損保)

 テレマティクス自動車保険の加入者は、2018年の導入以来、約4年で約150万人に達し、同保険を通じて蓄積した自動車走行データは地球約138万周分(2022年3月末時点)にも及ぶ。また、あいおいニッセイ同和損保は、全国約400の自治体と連携協定を結ぶなど「地域密着」を行動指針として掲げている。そこで同社は、蓄積した自動車走行データを自治体に還元する形で、データ活用の事業化を始められないかと考えた。

地域の危険地点を可視化する「交通安全マップ」を開発

 まず、地域の危険地点を可視化する「交通安全マップ」を開発し、22年4月から全国の自治体へ提供し始めた。同マップは、交通量に対して急ブレーキなど危険な運転の発生頻度が高い地点を最小約120mメッシュで地図上に可視化したもの。発生件数だけでなく、交通量を掛け合わせた「危険挙動発生率」によって、危険な地点の候補を判別できるところに特徴がある。

交通安全マップの表示例(出所/あいおいニッセイ同和損保)
交通安全マップの表示例(出所/あいおいニッセイ同和損保)

 また、交通安全マップによる危険地点の現状把握にとどまることなく、把握した危険地点を分析し、最適な交通安全対策メニューを提案する「交通安全EBPM(Evidence-Based Policy Making[証拠に基づく政策立案])支援サービス」を、22年5月から主に自治体向けに提供し始めた。同サービスについては静岡県裾野市が、同市の交通施策を強化するため22年7月に全国で初めて導入した。

交通安全EBPM支援サービスの内容。下方の開始時期は22年のいつからサービスの提供が可能になったかを示している(出所/あいおいニッセイ同和損保)
交通安全EBPM支援サービスの内容。下方の開始時期は22年のいつからサービスの提供が可能になったかを示している(出所/あいおいニッセイ同和損保)

 次いで、危険な運転が発生する場所だけでなく、危険な運転が発生する時間や運転者の属性なども分析できるサービスを、22年6月30日から交通安全マップに新機能として加えた。

 それまでは、個人情報保護の観点から、メッシュごとに危険な運転の発生率の高低しか、マップ上で可視化できなかった。なぜなら、同社が保有するデータをそのまま活用し、時間帯や属性などの詳細な条件で分析すると、「走行するクルマの少ない深夜帯などに発生した事故などはサンプルが数人しかないため、個人が特定される可能性が高くなる」(あいおいニッセイ同和損害保険 経営企画部データソリューション室担当次長の山田武史氏)からだ。

 そこで、個人を特定・識別できないようにして詳細な分析を進めるため、あいおいニッセイ同和損保は、デジタル化支援を手がけるテックベンチャー、LayerX(レイヤーX、東京・中央)が開発する個人情報保護技術群の「Anonify(アノニファイ)」を活用しようと考えた。21年から自動車走行データにAnonifyを適用する技術検証に取り組み、「密なミーティングを重ねて技術的なチューニングを進め」(山田氏)、今回の交通安全マップへの新機能搭載へとこぎ着けた。

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