コロナ禍によって、リモートワークを導入する企業が増えるなど、働き方・住み方に変化が起きている。では、リモートワーク・テレワークが一般化してから社会に出た人も多いZ世代の住居に対する意識はどうなっているのか。今回は、住まいについて、Z世代を研究する「Z総研」とマイナビ(東京・千代田)の転職情報サイト「マイナビ転職」の共同調査に加え、現役Z世代へのヒアリングを基にZ総研の分析担当が解説する。

コロナ禍でリモートワークやリモート学習という選択肢が生まれた中、Z世代はどんな住み方・働き方を希望するのか。アンケートとヒアリングから迫った(画像/Shutterstock)
コロナ禍でリモートワークやリモート学習という選択肢が生まれた中、Z世代はどんな住み方・働き方を希望するのか。アンケートとヒアリングから迫った(画像/Shutterstock)

 Z世代の社会人の多くは、コロナ禍のさなかに社会に出たことになります。リモートワークを導入する企業も多い中、働き方や住み方について従来とは異なる環境で過ごしてきています。また、大学などもオンライン化が進んでいることも特徴です。そこで今回は、Z世代の中で18~25歳に「住まい」に関するアンケートを実施しました。

 まずは、今住んでいる場所の満足度について、「現在の居住場所に満足していますか?」と尋ねたところ、38.6%が「満足している」、42.9%が「どちらかといえば満足している」と回答し、8割以上のZ世代が現在の居住場所に満足していることが分かりました。

 また、その理由を自由回答で聞いてみると、「駅や職場から近くて便利」といった立地の利便性や、「実家に住んでいて過ごしやすい」など、家族と住んでいたり地元に近かったりという精神的な安心感から満足度が高いと回答した人が多くいました。

「現状の居住場所に満足していますか?」と聞いた結果
Z世代を研究するZ総研とマイナビ転職が共同でアンケート調査を実施(2022年6月17~22日、インターネット調査、全国の18~25歳の男女184人が対象)。以下同
Z世代を研究するZ総研とマイナビ転職が共同でアンケート調査を実施(2022年6月17~22日、インターネット調査、全国の18~25歳の男女184人が対象)。以下同
満足している理由は、立地についての回答が多数
Z総研とマイナビ転職が共同で実施したアンケート結果より。自由回答より抜粋
Z総研とマイナビ転職が共同で実施したアンケート結果より。自由回答より抜粋

 もう少し、Z世代の生の声を聞いてみましょう。今回は、上記の調査に併せて、Z総研のZ世代メンバーとマイナビ転職メンバーのZ世代社員、合計6人による座談会をオンラインで開催。座談会メンバーの中でも様々な意見が飛び交いました。

 現状に満足派の意見はこちらです。

「乗り換えで使う駅が最寄りなので、電車に乗りやすいところが一番満足している点。あとは住宅街でコンビニやスーパーも多くて、生活する上ですごく便利で満足している」(Kさん、女性・社会人3年目)

「職場までは20分くらいで、新宿や渋谷など遊ぶ場所から近いので満足している。家賃もエリアの相場からすると高くないことが満足していると答えた理由」(Aさん、女性・社会人2年目)

 アンケートの自由回答でも出てきた職場への近さに加え、商業施設へのアクセスの良さ、交通の利便性など、「移動時間の短さ」を重要視する意見がやはり目立ちます。

不満の原因の多くも「立地・環境」

 一方、同じ満足度に関するアンケートで、「どちらかといえば満足していない」「満足していない」と回答した人たちの意見を見ると、「部屋は広くて気に入っているけど駅から遠い」「大学まで2時間かかる」「都内に行きづらい」など、交通の不便さや都心までのアクセスの悪さを挙げている人が大多数を占めていました。それ以外の意見としては「給料のほとんどが家賃でなくなってしまう」「1人暮らしをしたいけれど、まだ実家に住んでいるため」などがありました。

不満の理由もやはり立地が大きな割合を占める
Z総研とマイナビ転職が共同で実施したアンケート結果より。自由回答より抜粋
Z総研とマイナビ転職が共同で実施したアンケート結果より。自由回答より抜粋

 座談会でも、同様の意見が出ました。

「実家は都内にあるけれど、バスに乗らないといけないので面倒くさい。実家のインテリアが自分好みじゃないのでテンションが上がらない」(Mさん、女性・社会人5年目)

「広さやきれいさに不満はないけれど、午前1時半くらいまで電車が通ってうるさいのがネック。また、会社から40分くらいかかる。駅まで歩く距離が長くて、徒歩15分くらいかかるので今のような夏場は厳しいなと思いながら生活している」(Mさん、男性・社会人3年目)

 駅や職場へのアクセスが理由として多く挙げられました。それに加え、騒音問題やインテリアの好みなどといった、周囲の環境についての言及も目立ちました。

理想の住む場所、地元派も海外派もそれぞれ2割

 では、Z世代はどのような場所に住みたいと考えているのでしょうか。理想の住み方、場所について迫ってみます。

 「働く場所(学ぶ場所)を自由に選べるとしたら、どこに住みたいですか?」という質問では、「職場・学校の近く」が47.8%と最も多く、次いで23.4%「地元」、22.3%「海外」といった結果になりました。

「働く場所(学ぶ場所)を自由に選べるとしたら、どこに住みたいですか?」と聞いた結果
Z総研とマイナビ転職が共同で実施したアンケート結果より
Z総研とマイナビ転職が共同で実施したアンケート結果より

 まず目立つのが、「職場や学校の近くに住みたい」という意見。座談会でも、多くの声が挙がりました。

「会社が表参道(東京)なので遊べる場所もあるし、基本的には会社の近くにできるだけいたいなと思っている。けれど、職場の立地があまり良くなかったら会社の近くに住みたいと思わなかったかもしれない」(Mさん、女性・社会人5年目)

「お酒が好きで1人でも飲みにいったりするので、オフィス街じゃないと大衆居酒屋などが充実していないこともあり、『オフィス街=会社の近く』がいいなと思った」(Mさん、女性・社会人4年目)

「職場が近くないと残業したときに帰るのが面倒になるし、大変だと感じる。職場が近いと少し残業しても気にならなくなるので、職場から近いに越したことはない」(Kさん、女性・社会人3年目)

 無駄な時間を嫌う、“タイパ”(タイムパフォーマンス)を意識する声が目立ちます。

 一方、「地元に帰りたい」という声もありました。

「(地元の)福岡が好きで仕方がないので、帰れるなら帰って働きたい。理由がどうこうというよりかは、ただただ地元が好き。関東(の都市部)と比べると家賃も安いので、そういう部分もいいなと思う」(Mさん、男性・社会人3年目)

 さらに、「コロナ禍の前後で住む場所や物件の希望条件に変化があったかどうか」について座談会メンバーに聞いてみると、「コロナ禍前は作業用のデスクを自宅に置くことは考えてなかった。デスクが置ける広さの部屋を借りようと思ったのは、確実にコロナ禍の影響だと思う」など、在宅勤務が導入されたことによる影響も着実に出ているようです。住まい探しの条件の1つとして「在宅で働くこと」を意識しているZ世代が多くいるようでした。

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