岡山県玉野市。瀬戸内海を望む穏やかな港町に、競輪場に併設されたホテル「KEIRIN HOTEL 10」が誕生した。日本初のスタジアム一体型ホテルでの宿泊は、想像を超えて新鮮なものだった。SNSなどでも話題の同施設に実際に泊まった体験記をお届けする。また運営元である、元星野リゾート取締役が率いるホテルプロデュース会社「温故知新」(東京・新宿)に、ホテル完成までの話を聞いた。

謎多き競輪ホテル。その全貌とは?
謎多き競輪ホテル。その全貌とは?

 瀬戸内海を臨む穏やかな港町、岡山県玉野市。海と山に囲まれたこの町には、日本に43施設ある競輪場のうちの1つ、玉野競輪場がある。海沿いの公園を横目に道を行くと、突如として競輪場は現れる。そのさらに奥に進むと、思いがけないカラフルな建物が見えてくる。2022年3月にオープンした、「KEIRIN HOTEL 10」だ。

 その名の通り競輪場に併設されているこのホテルだが、予想以上に、驚くほどスタジアムと近い。エントランスを一歩出れば目の前はコース。練習中の選手たちがものすごいスピードで目の前を走り抜けていき、荒い息づかいがフェンス1枚を通して聞こえてくる。

 全149室中126室が競輪場に面していて、瀬戸内海とそこに浮かぶ島々をバックに、選手が練習に励む様子を一望できる。実際に宿泊した際は、ミッドナイトレースの開催期間だった。旅先の夜、宿から競輪レースを眺めながら過ごす体験はなかなかない。全く競輪の知識がなくとも、思わずテレビで競輪チャンネルを流しながらレースに注目せずにはいられない。発走機から車体が外されレーサーたちが一斉にスタートを切る音、レースが最後の1周半に入ると鳴らされる鐘の音などが聞こえ、窓越しからでも緊張感が伝わってくる。

 競輪は9人のレーサーで行われ、各レーサーには別々の色が割り当てられていることから、9階建てのホテルの各階は9色のモチーフカラーで装飾されている。客室は「10人目のレーサーになったつもりで」過ごせるように、選手のロッカールームをイメージしており、ユニホーム風のナイトウエアや車輪を模したハンガーなど、至る所に競輪モチーフを発見できる。

室内履きや時計など、いろいろな所に競輪モチーフを発見できる
室内履きや時計など、いろいろな所に競輪モチーフを発見できる
多くの部屋からはスタジアムを一望できる。八百長防止や安全の観点から、試合中はテラスに出ることが禁じられているのも独特だ
多くの部屋からはスタジアムを一望できる。八百長防止や安全の観点から、試合中はテラスに出ることが禁じられているのも独特だ

 レース期間中は選手の宿舎としても使われるというから面白い。そもそもこのホテルは、玉野競輪場の建て替えプロジェクトの一環として企画された。22年で開設73年目を迎えた競輪場の老朽化を受けてリニューアルを行う話から、宿泊施設を併設してはどうかというプランが持ち上がった。一般的に競輪場には選手の宿泊施設も設置されているが、施設が使用されるのはレースが開催されるときのみ。年間数十日しか使用されないのであれば、いっそホテルにしてしまい、一般客にも開放したらどうかと話が進んだ。そんな中、プロジェクトを推進することになったのが、ホテルのプロデュース事業を行う「温故知新」(東京・新宿)だ。

 温故知新は、マーケティングやオペレーションなどのノウハウを駆使して、宿泊施設の企画・プロデュースや後継者不在の施設の事業承継を行う企業だ。地域の個性を引き出して宿を通してその地の魅力を伝えることをミッションに掲げ、宿や宿が建つ土地の個性を生かした運営を特徴としている。

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