新型コロナウイルス禍による宅配と内食需要の高まりでミールキット市場が拡大するなか、世界16カ国で展開するドイツ発のミールキット定期宅配サービス「HelloFresh(ハローフレッシュ)」が日本上陸。2022年4月から、サービスを正式に開始した。欧米諸国とは食卓事情が大きく異なる日本での同社の戦略とは。

 ミールキットとは、特定の料理のレシピと、それに必要な食材や調味料がセットになった商品。近年、外食企業や調理家電メーカー、ECサイトなど多彩な企業が参入し、市場が拡大している。2013年からミールキットを販売している食品宅配サービスのオイシックス・ラ・大地では、定期会員の65%に相当する22万6594人が、定期的にミールキットが届くコースに登録しており、22年3月末時点で前年同期比25%増加しているという。

 そんななか、ドイツ発のミールキット定期宅配サービス「HelloFresh(ハローフレッシュ)」が、日本に進出。ハローフレッシュ・ジャパン(東京・港)が21年11月からモニター販売を開始し、22年4月から正式にサービスをスタートさせた。アジア市場は初進出となる。

 ハローフレッシュは11年にドイツ・ベルリンで創業。国内で業績を伸ばし、12年には英国、13年には米国に進出。現在は日本を含めて世界17カ国でサービスを展開している。21年までに累計約10億食のミールキットを提供し、アクティブユーザーは約800万人(22年6月時点)とミールキットサービスでは世界一だという。

日本では22年4月から正式にスタートしたミールキット定期宅配サービスはオンラインのサブスクリプション(定額制の継続購入)で、料金は2人前3食分で税込み5190円(1食あたり810円、送料は330円)。「定番」「ファミリー」「低カロリー」「ワールドグルメ」の4プランがあり、毎週更新される12種から3~4メニューを選択可能(4メニューは2人前のみ)。配達頻度は1週間・隔週・4週間に1回から選択可能(画像提供/ハローフレッシュ・ジャパン)
日本では22年4月から正式にスタートしたミールキット定期宅配サービスはオンラインのサブスクリプション(定額制の継続購入)で、料金は2人前3食分で税込み5190円(1食あたり810円、送料は330円)。「定番」「ファミリー」「低カロリー」「ワールドグルメ」の4プランがあり、毎週更新される12種から3~4メニューを選択可能(4メニューは2人前のみ)。配達頻度は1週間・隔週・4週間に1回から選択可能(画像提供/ハローフレッシュ・ジャパン)

 ただ、日本の食卓事情は欧米とは大きく異なる上、国内には多くの競合がひしめいている。どこに勝算があるのか。ハローフレッシュ・ジャパンCEO(最高経営責任者)のウォン・ジョン氏に聞いた。

 同氏によると、ハローフレッシュが欧米諸国で成功を収めた背景には3つのポイントがあるという。

(1)顧客からのフィードバックにもとづいた製品開発でローカライズに成功
 そもそも、欧米でも家庭料理は国によって大きく違うもの。それにもかかわらず、なぜハローフレッシュは短期間でグローバル展開ができたのか。ジョン氏は「我々のプロダクト開発の主軸が顧客からのフィードバックにあるので、どの国に参入してもローカライズに成功している」と語る。

(2)スピーディーな改善が可能
 アジリティー(機敏さ)が高いことも成功した理由の一つだという。「利用者のニーズが分かり次第、それに合わせてサービスや製品を柔軟に変更できるスピードが強み」(ジョン氏)。米国を例に挙げると、13年にサービスを展開したときにはすでにミールキット市場で7割以上のシェアを占める競合があり、同社は3番手くらいからのスタートだった。しかし、徹底したデータドリブンにより、メニューだけでなく、オペレーションや物流でもフィードバックをもとにしたスピーディーな改善を重ね、数年かけてトップシェアを占めるようになったという。

(3)世界中から収集した膨大なデータを活用
 17カ国で展開しているので、世界中のデータを活用したアプローチが可能。世界中の利用者から毎週数百万件も届くレビューを集約し、分析・評価を実施しているという。「世界各国のマーケットで、今何が受けているかという情報交換を定期的に実施している。世界中で行っている施策で何が売り上げに寄与しているか、日本の競合もまだやっていない新しい取り組みは何かといったデータや事例を持っているのは、日本の競合にはない強みだと考えている」(ジョン氏)

「アジア進出を視野に入れたとき、最初に選んだのが、伝統的で奥深い食文化があり、市場規模が大きい日本だった。アジアで展開していくには、まずは日本で成功することが必要」と語る、ハローフレッシュ・ジャパンCEOのウォン・ジョン氏(画像提供/ハローフレッシュ・ジャパン)
「アジア進出を視野に入れたとき、最初に選んだのが、伝統的で奥深い食文化があり、市場規模が大きい日本だった。アジアで展開していくには、まずは日本で成功することが必要」と語る、ハローフレッシュ・ジャパンCEOのウォン・ジョン氏(画像提供/ハローフレッシュ・ジャパン)

「あえて消費者をセグメントしない」のも成功の一因

 では、日本で消費者をどのようにセグメントし、どこをターゲットにしていくのか。

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