YouTubeやTikTokに日々触れている若者とのつながりを生み出すには、動画マーケティングが不可欠となりつつある。動画管理ツールを開発する米ループ・ナウ・テクノロジーズの幹部は、インフルエンサーや芸能人に依頼するのではなく、社員や店員を起用した「リアルさ」重視の動画が広がるという。
スマートフォンと5Gのような高速通信が普及したことで、動画を中心にコンテンツのリッチ化が進んでいる。YouTubeや、短尺動画サービスのTikTokが広がり、InstagramなどSNS(交流サイト)も動画表示に対応した。そうしたサービスに慣れ親しんだ若者は、調べ物があればグーグルではなく、まずは動画を検索するともいわれる。
「動画ストリーミングサービスやSNSは進化したが、その他のWebサイトは取り残されている」と話すのは、米ループ・ナウ・テクノロジーズのチーフ・コマーシャル・オフィサー、アナンド・ビディヤナンド氏である。
同社は動画管理プラットフォーム「Firework(ファイヤーワーク)」を開発している。スマホで録画した縦型動画を保存、編集、Webサイトやアプリへ配信する一連のインフラ機能をまとめたクラウドサービスである。かつて、企業がWebページで動画を配信するとなれば、動画用のサーバーを立て、アクセスの急増に備えるにはスケーラビリティー(拡張性)を考慮するなど、独自のインフラを準備する必要があった。
そのために「動画の編集チーム、管理チーム、エンジニアリングチームといった組織もつくらなければならなかった」(ビディヤナンド氏)。Fireworkのような動画配信サービスを利用することで、準備に数カ月もかける必要がなく短期間で配信できる体制が整う。
例えば、ヘアケア製品大手である米オラプレックスのWebサイト。トップに大きく表示した写真の下には、スマホで撮影した縦型動画が並ぶ。動画に登場する人々は一般のユーザーで、ヘアケア商品を使う様子を見せて「とっても優しくてソフトだけどしっかり洗えるわ」「10分で浸透して髪が輝いてくるの」など特徴をコメントする。
動画の体裁はTikTokにも似ており、画面横の矢印を押すと次の動画、また次の動画へと切り替わっていく。違いは画面右下に商品の写真があるところ。クリックをするとEC(電子商取引)の画面に飛び、その商品を購入できる。オラプレックスのWebサイトに、Fireworkの動画配信の仕組みを組み込む作業は、2週間で完了したという。
現在、Fireworkは世界で1000以上のWebサイトやアプリで利用されており「四半期ごとに2倍のペースで伸びている」(ビディヤナンド氏)。日本企業でも花王、光文社、良品計画、アパレルのヤマトインターナショナルなどが採用している。
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