売り上げは9割減。渡航できないため新刊準備はままならず、そもそもガイドブック需要がいつ戻るか分からない。そんな絶体絶命の状況でも、海外旅行ガイドブックの大定番「地球の歩き方」は強かった。それまでのガイドブックとは路線を逸した図鑑シリーズや、異質コラボ本が大ヒット。自らも旅人である編集長は「旅って逆境に強くなるので、知らないうちに瞬時の判断が身についていたのかなと信じたい」とも話すが、その起死回生復活劇の裏には、43年前の創刊以来、地球の歩き方が大切にしてきた1つの軸があった。

「地球の歩き方」編集長の宮田崇氏(左)とコンテンツ事業部の池田祐子氏
「地球の歩き方」編集長の宮田崇氏(左)とコンテンツ事業部の池田祐子氏

 日本政府観光局(JNTO)の統計では、2020年の出国日本人数は317万人、21年は51万人と、年々上昇推移し2008万人を記録した19年から大幅に減少した。新型コロナウイルス禍による観光産業への影響は甚大で、海外旅行ガイドブックの大定番「地球の歩き方」も影響を色濃く受けた。

 一時売り上げは9割減。渡航ができないため新刊準備はままならず、そもそもガイドブック需要がいつ戻るか分からない。そんな未曽有の事態の中、月刊のミステリーマガジン「ムー」とコラボした「地球の歩き方 ムー 異世界の歩き方」や、初の国内ガイド「東京」「東京 多摩地域」など、海外旅行ガイドブックとしてのスタイルを打ち破る新刊を続々と刊行。ムーとのコラボ本は12万部突破の売れ行きとなるなど、話題を集めている。

 海外旅行需要が激減するとともに、書店の海外旅行関連の棚も減っていった。当時の状況を地球の歩き方編集長の宮田崇氏はこう振り返る。「旅が再開したときに売り場がないと我々としては戦いようがないので、書店の棚を死守するのが命題だった。棚を維持するためにはインターネットでなく、書店で買ってもらわないと意味がない。となると、ネットで買うのを躊躇するような、実際に書店に行って買うに値するか中身を確認する必要がある企画をつくらなくてはいけない。なので、旅には行けなくても地球の歩き方の棚に来てもらえるような、ちょっとニッチな企画をつくっていった」

 活路となったのは「旅の図鑑シリーズ」だった。国や都市を紹介するガイドブック的要素が強い従来の地球の歩き方をその表紙の色から「赤版」とするなら、国をまたいでテーマに沿った雑学をまとめたのが「青版」の図鑑シリーズだ。

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