タンブラー付き商品が累計200万部超、枕は130万部超、バックパックは100万部超――。宝島社が展開する付録メインの「マルチメディア商品」が好調だ。2018年からコンビニでの販促を強化し、直近4年間で売り上げを約8倍に伸ばした。コンビニでの販促術やミリオンセラーを生む秘訣を聞いた。
コンビニエンスストアの雑誌コーナーに並んだタンブラーやかばん、キャラクターがデザインされたポーチ、ハンディ型の扇風機……。これらは宝島社が手掛ける、付録をメインとした「マルチメディア商品」と呼ばれる“本”だ。あくまでも付録主体だが、商品の概要やこだわりを掲載した8ページほどの冊子も同封されている。これにより本として流通させることが可能となり、書店やコンビニの雑誌コーナーでも販売できるようになる。
宝島社は2010年に「美顔ローラー」を付録にしたのを皮切りに、現在は年間300種類近くのマルチメディア商品を販売する。付録のデザイン性や機能性の高さで勝負し、これまで10以上のシリーズでミリオンヒットを記録している。
そんなマルチメディア商品が、ここ数年でさらに勢いを増している。ヒットを後押ししたのはコンビニでの販促強化だった。
宝島社は18年からコンビニの客層に合わせて陳列方法やパッケージを改良。これがブレイクスルーとなり、コンビニでの実売数が4年前に比べて約8倍に伸びた。シリーズ累計130万部を突破した「天使の深睡眠マクラBOOK」は、コンビニに販路を広げたことで発行部数を約3倍に、ミリオンセラーの「moz BIG BACKPACK BOOK」はコンビニ版が書店版より約2.5倍の発行部数を記録している。これまで販売していたものと中身や価格はほぼ変えず、見せ方を工夫することで、コンビニでの売り上げを伸ばした。
コンビニは書店より男性客が多い
宝島社マルチメディア局 第2編集部編集長の皆川祐実氏は「マルチメディア商品は長年、コンビニの雑誌コーナーでの売れ行きをどう伸ばしていくか考案していた。18年当時、編集部内でも『既に書店で何十万部と売れている商品を、コンビニ版に改良して部数を伸ばせるのか?』と半信半疑だった」と過去の状況を振り返る。
難しい局面からコンビニでの売り上げ増を達成したのには、大きく3つの要因がある。
1つ目は、男性客が手に取りやすいようにしたことだ。コンビニと書店でマルチメディア商品の売れ行きを比べたところ、コンビニのほうが男性の来店客や購入者が多いと判明した。そこで宝島社は、同じブランドの商品でもコンビニ版は男性客に寄せて、細かい商品部分やパッケージを調整した。
「書店では、女性誌コーナーなどの近くにマルチメディア商品が並ぶケースが多い。一方コンビニでは、男性向けと女性向けの商品が一緒になって置かれている。そのためコンビニでは書店よりも男性購入者の割合が高い傾向になる。一例として、『moz(モズ)』という北欧ブランドと共同開発したバックパックは、男女購入比率が書店だと女性8割、男性2割ほどだが、コンビニだと女性6割、男性4割になった」(皆川編集長)
男性が気軽に手に取れるように、アパレル商品では表紙を別々に制作した。書店版は女性タレントを単体で載せているのに対し、コンビニ版は男性モデルをメインにしたり、男女ペアをモデルにしたりした。かばんなどの日用品が付録の場合は、書店版では女性を意識して、流行色を用いたり、かわいらしい引き手を付けたりした。一方コンビニ版では、デザインをシンプルにしつつ、ポケットを多く付けるなど機能面を前面に押し出した。
他にも細かい点では、ショルダーストラップの長さに余裕を持たせたり、大き目の引き手にするなど微調整。男性にとって使い勝手が良い仕様に変えた。
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