「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムが2022年8月5日、東証グロース市場に上場する。多彩なコンテンツを生み出し、多様なチャネルでファンと濃くつながり、高い収益を上げている同社。今回は、斬新なビジネスモデルや今後の展望、そして上場の狙いについて、代表の青木耕平氏にインタビューを行った。

クラシコム代表の青木耕平氏。1972年生まれ。2006年、実妹である佐藤友子とクラシコムを共同創業。07年よりライフカルチャープラットフォーム「北欧、暮らしの道具店」を運営する
クラシコム代表の青木耕平氏。1972年生まれ。2006年、実妹である佐藤友子とクラシコムを共同創業。07年よりライフカルチャープラットフォーム「北欧、暮らしの道具店」を運営する

 スウェーデン・ストックホルムで北欧ビンテージアイテムをクレジットカードの限度額いっぱいまで買い付けて2007年に始まった「北欧、暮らしの道具店」。同店を運営するクラシコムは今や、売上高45.3億円、営業利益7.8億円の規模(2021年7月期)へと成長を遂げている。そんな同社は2022年8月5日、東証グロース市場に上場する。

初めてのスウェーデン・ストックホルムでの買い付けの様子。青木氏は起業当初、賃貸不動産のCtoCサービスを立ち上げたもののうまくいかず、事業を手伝っていた実妹の佐藤友子氏と一緒に“思い出づくり”のためにストックホルムへ行くことに。せっかく行くのならと、佐藤氏の趣味である「北欧ビンテージ食器」を買ってきて、販売することにしたという。それが、「北欧、暮らしの道具店」スタートのきっかけになった
初めてのスウェーデン・ストックホルムでの買い付けの様子。青木氏は起業当初、賃貸不動産のCtoCサービスを立ち上げたもののうまくいかず、事業を手伝っていた実妹の佐藤友子氏と一緒に“思い出づくり”のためにストックホルムへ行くことに。せっかく行くのならと、佐藤氏の趣味である「北欧ビンテージ食器」を買ってきて、販売することにしたという。それが、「北欧、暮らしの道具店」スタートのきっかけになった
2006年の創業から2年ほどたった08年頃のオフィスの様子
2006年の創業から2年ほどたった08年頃のオフィスの様子

 今回、上場に際してクラシコム代表の青木耕平氏にインタビューを行った。実際の声をお届けする前に、改めてクラシコムのビジネスモデルについて説明をしていきたい。

 新規上場承認に関する発表の際に公開された資料「新規上場申請のための有価証券報告書」には、驚きのファクトが大量に並んでいる。まず1つが、現在の経営陣である兄妹2人やその親族の個人出資による自己資金がベースとなっており、外部の投資家からの資金調達をすることなく上場まできていることだ。

 加えて、21年7月期には前述のように売上高45.3億円に対して営業利益は7.8億円と、営業利益率が17%を超えており、一般的な通販ビジネスと比べると高収益体質なのが分かる。さらに、1年間の商品回転率(在庫回転率)は14.1回となっており、発売した商品が1カ月以内に売り切れる計算に。効率的なビジネスを展開していることが見える。

 この強さの要因となっているのが、コンテンツを軸とした独自のビジネスモデルにある。

強さの秘密は、斬新なビジネスモデルにあり

 同社は「北欧、暮らしの道具店」を、単なるECサイトではなく「ライフカルチャープラットフォーム」と定義している。多様なコンテンツを生み出し、それをSNSなどの多様なチャネルで生活者に直接届け、その世界観(ライフカルチャー)に共鳴した生活者が集い、商品購入へと進んでいく。コンテンツパブリッシャーとしての強さと生活者との直接のつながり、これが異質なビジネスモデルの源泉となっている。

クラシコムのライフカルチャープラットフォームの構造。同社の有価証券報告書より抜粋
クラシコムのライフカルチャープラットフォームの構造。同社の有価証券報告書より抜粋

 より詳細に見ていく。ライフカルチャープラットフォームは3層構造になっている(上図参照)。1層目、表層ともいえる部分がお金の稼ぎ方である「ビジネスライン」。ビジネスラインは2本あり、収益の屋台骨である「D2C」と「ブランドソリューション」に当たる。

 まずD2Cビジネスは、端的にいえばECによる商品販売だ。アパレル、キッチン、インテリア雑貨を中心に、ECモールやECプラットフォームは通さず、自社サイトで自前のシステムで販売している。自社企画のオリジナル商品が売上高の約50%を占め、収益率が高い。仕入れ商品も当然あるが、同社は消費者と直接接点を持ち、直接商品を届ける状態であることから、D2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)と定義している。

 もう一方のブランドソリューションは、外部の企業・ブランドに対する支援事業だ。前述のように、同社は多様なコンテンツを生み出し続け、企画制作のノウハウと人材が極めて厚い。さらに、生活者との強固なつながりもある。その能力を活用し、企業のブランディングや販促のためのソリューションを提供する仕組みだ。大手メーカーを中心に取り組みが広がっている。

 だがこのビジネスラインはあくまでも“表層”であり、実は根幹となっているのが多様なチャネルで生活者と直接つながるコンテンツパブリッシャーとしての力と、その蓄積から生まれるカルチャーにある。

 それがライフカルチャープラットフォームの2層目、「カルチャーアセット」だ。多様なコンテンツとその蓄積から生まれたブランド、そしてデータがこれに当たる。

 そして第3層が、このコンテンツを発信、浸透するためのSNSや動画・音声共有サービスのアカウントという多様な「エンゲージメントチャネル」。コンテンツだけでなく、多種多様な届ける手段を持つことで、3層のプラットフォームが完成する。

 もちろん、昨今はECサイト運営者やメーカーがコンテンツをつくる事例は何ら特殊なことではなくなっている。だが、北欧、暮らしの道具店のコンテンツづくりは“片手間”ではない。むしろ本丸だ。実際、どれだけのコンテンツが生み出されているのか、これもまた上場関連の資料で明らかにされている。

 ウェブやアプリで提供される「読み物」は平日毎日5本、月間では100本程度に上る。それもただの商品紹介ではなく、バイヤーがそれに込めた思いや、スタッフが自身の生活を語るコラムなど多種多様だ。

 さらに動画制作にも本腰を入れている。YouTube戦略は以下の参考記事で詳報しているが、既にオリジナルドラマを4作制作しているのに加え、ドキュメンタリーも公開。さらにポッドキャストなどを活用して音声コンテンツの制作・提供にも乗り出している。

 「フィットする暮らし、つくろう。」というミッションを軸に、世界観に即したコンテンツが蓄積され、それが多様なエンゲージメントチャネルによって生活者に届く。そして、生活者が共感をし、チャネルを「フォロー」することでつながりが生まれ、日常的にコミュニケーションが取れる関係性ができる。そのつながった人たちに対し、毎日のようにコンテンツを届けることでエンゲージメントがさらに高まり、最終的には商品購入に至る。そして商品購入を起点にまた、コミュニケーションを取っていく。この循環こそが、強さといえる。

▼参考記事 驚異の開封率40%超 「北欧、暮らしの道具店」メルマガの流儀 バズらなくてもいい!? 「北欧、暮らしの道具店」YouTubeの作法

 では、ここからはインタビューをお届けしていく。

ECからプラットフォームへの転換点は…

――当初は北欧雑貨の輸入・販売からスモールスタートしました。現在の「ライフカルチャープラットフォーム」という形でビジネスを発展させていくことになったターニングポイントは。

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