4大赤文字系ファッション誌のひとつ1988年の創刊の女性誌「Ray(レイ)」が、新天地で実売率を伸ばしている。主婦の友社(東京・品川)から、WebサービスのDONUTS(ドーナツ、東京・渋谷)に事業譲渡されたのが2021年4月。編集部ごと新天地に移り発行を続けてきたが、年間平均の返本率が譲渡前の48%から44%となり、実売率が改善した。同誌のWeb版の月間PV(ページビュー)の最高値も約1.6倍になるなど、事業を拡大している。

 雑誌市場は縮小傾向が続く。最近では講談社の女性誌「with」が、2022年3月28日発売の5月号をもって事実上休刊した。出版科学研究所の『出版指標 年報 2022年版』「出版物の推定販売金額」 によると、1996年をピークに、少子高齢化やインターネット・スマホの普及などから、雑誌市場の需要が激減。96年は1兆5633億円だった雑誌市場が、2021年には5276億円と、約3分の1にまで縮小している。

 そんな状況の中、DONUTSは21年に出版事業に進出した。主婦の友社発行の女性ファッション誌「Ray(レイ)」の関連事業を21年4月に買収した。出版事業部をDONUTSの社内に設立し、編集スタッフもそのまま引き継いだ。「Ray」は毎月5万部を発行しており、販売は主婦の友社に委託する形をとる。Web媒体もDONUTSが運営している。

 DONUTSが現在手掛けるのはRayを含めた4媒体。22年には祥伝社と業務提携をして、17年に休刊した「Zipper(ジッパー)」 を22年3月に復刊した。きゃりーぱみゅぱみゅなどが所属するアソビシステムとの共同事業だ。ソニーミュージックグループが発行していた雑誌で20年に休刊した「mamagirl(ママガール)」「andGIRL(アンドガール)」のWeb版も現在はDONUTSの出版事業部が運営している。そもそもなぜ、DONUTSが出版事業に進出しようとしたのか。

1988年の創刊の女性誌「Ray」。発売は主婦の友社、発行はDONUTSだ
1988年の創刊の女性誌「Ray」。発売は主婦の友社、発行はDONUTSだ

自社の事業と組み合わせればマネタイズできる

 もともとRayには、DONUTSが提供しているライブ配信事業「ミクチャ」で広告を定期的に出稿していたというのはDONUTS代表取締役の西村啓成氏。雑誌が次々と休刊して行くことが気になっていた西村氏は「なんとか雑誌を復活させる道筋を立てられないか。うちのサービスと連係させれば、きちんとマネタイズできるのではないかと思った」と話す。

 RayはWeb版も展開していたが「誌面をただWeb化するだけではうまくいかなかった」と語るのは、Rayの編集部と一緒に主婦の友社からDONUTSに移り、出版事業部 事業部長となった大橋和広氏だ。「雑誌事業を黒字化するために、Web版やInstagramなどデジタル周りトータルで雑誌のブランド価値を高め、収益を上げていこうとしていた」と振り返る。雑誌の周辺で利益を出し、将来的には雑誌本体より周辺で稼ぐ事業計画だったが、「雑誌のコンテンツをWebに出せばいい、Instagramに出せばいいというだけだと、それぞれの分野のガリバーとは勝負にならない。デジタルでもどうやって情報価値を上げていくかという戦略が必要だった」(大橋氏)。

 DONUTSでは、雑誌のブランドを最大限に生かした、雑誌とは別の収益モデルの構築も進める。その1つが、同社が提供しているライブ配信事業、ミクチャとの連係だ。

 ミクチャでは毎月のようにイベントが開催されており、Rayなど雑誌への登場権をかけたライブ配信のイベントがある。ライブ配信者である「ライバー」が参加して一定期間ライブ配信を行い、その配信でポイントを多く獲得した上位数名が雑誌に登場できる仕組み。「ファッション雑誌のモデルになるのは憧れであり、紙面に出られることに価値があると思ってもらえている」(大橋氏)。Rayのブランドをイベントの出口として活用することで、Rayに出たいと考える人がミクチャでライブ配信をしてくれる可能性もある。

ライブ配信「ミクチャ」との連動して誌面にも登場してもらっている
ライブ配信「ミクチャ」との連動して誌面にも登場してもらっている

 もちろん、Rayにもシナジー効果がある。Rayに掲載された人が雑誌を買ったり、イベント出場者が友達に購入を薦めてくれる効果も期待できる。

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