愛知県美浜町の海鮮市場+BBQ「魚太郎本店」が年間120万人と破格の集客力を見せている。コロナ禍でも業績は右肩上がりで、グループ売り上げは50億円に達する勢いだ。この夏には大型レジャー施設「ラグーナテンボス」(愛知県蒲郡市)にも新店舗をオープン。地方の一鮮魚店が急成長を果たした秘密とは?
コロナ禍でも右肩上がりで成長
名古屋から南へ伸びる知多半島の南端近く。海鮮市場「魚太郎本店」は、名古屋からクルマでおよそ1時間の愛知県美浜町に店舗を構える。決して好立地とはいえない場所にありながら、休日ともなると600台もの駐車場が埋まり、客足が途切れない。年間の来場者数は約120万人。これは愛知県内の観光施設として人気の東山動植物園(名古屋市)の約134万人に匹敵する数字だ。
愛知県と岐阜県に全5店舗を展開するグループ全体の売り上げは、2018年度が38億5400万円、19年度は43億円(前年比111%)、20年度は46億7000万円(同108%)、2021年度は49億5800万円(同106%)と、コロナ禍においても右肩上がりで推移している。
人気の秘密は「手ぶらOK、予約不要、セット料金なし」
集客の核になっているのが市場に併設するBBQ(バーベキュー)場だ。海が見える屋根付きの浜焼きBBQ場は実に1100席。5月の大型連休や夏場の最盛期には1日最大2500人が殺到し、1~2時間待ちになるほどの人気だ。
同店は手ぶらBBQの先駆けとして1995年にオープン。アウトドアブームやコロナ禍によって密を避けられるスタイルで全国的に人気が高まっているBBQだが、同店の群を抜く集客力の秘密は何か。
1つ目のポイントは「自由度の高さ」。手ぶらOK、予約不要、雨でも営業、年中無休。BBQ施設は予約制やセット料金制が多いが、魚太郎の基本料金は席料のみ(フリードリンク付きで大人900円・小学生400円、幼児無料※幼児はフリードリンク利用だと100円)。BBQの食材は約80種が並ぶ販売スペースで自由に選んでその場で会計するスタイルで、併設の鮮魚市場で購入したものを持ち込むこともできる。利用者は本当に食べたいものを必要な分だけ食べることができるのだ。
多彩な商品を陳列するこのスタイルは、食材ロスのリスクを伴うためBBQ場では採用しにくい。抜群の集客力で商品の回転が良いからこそ可能なシステムであり、だからこそ他社が簡単にはまねできない同社ならではのウリとなっている。
2つ目のポイントは「鮮度の高さ」。仲買や卸を通して魚介を仕入れるのではなく、地元の漁港5カ所(うち1カ所は三重県)のセリ権を持ち、朝水揚げされたばかりの食材を自らセリ落として販売している。集客力・販売力があるため、大量の魚介を値ごろ感のある価格で仕入れることができ、リーズナブルかつ新鮮な状態で提供できる。セリ権を持った運営者による大規模なBBQ施設は全国を見渡してもほとんどない。各地にBBQ施設ができて経験者が増えるほど、同社のクオリティーの高さが消費者に伝わり、リピート需要にもつながっているわけだ。
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