本社機能の一部を兵庫県淡路島に移転し、地方創生にも取り組むパソナグループの新施設が2022年4月29日にオープンし、その斬新なデザインが話題になっている。レストランやアトラクション施設などを次々と開業させてきた同社が新たに挑戦するのは、座禅やヨガを通して心身のバランスを整えるウエルネス系体験施設「禅坊 靖寧(ぜんぼう せいねい)」。建築界のノーベル賞ともいわれる「プリツカー賞」を受賞した建築家、坂茂氏による設計に込められた思いとは。

淡路島北部の森の中に浮かぶようなデザインが特徴の座禅道場施設「禅坊 靖寧」。設計は建築家の坂茂氏。木を多用し、自然に溶け込むよう山の稜線(りょうせん)を超えない高さにした
淡路島北部の森の中に浮かぶようなデザインが特徴の座禅道場施設「禅坊 靖寧」。設計は建築家の坂茂氏。木を多用し、自然に溶け込むよう山の稜線(りょうせん)を超えない高さにした

最大限の抜けと透明感を実現した空中空間

 車で明石海峡大橋を渡り、観覧車のある淡路サービスエリアから約8分。淡路島北部の四方が山に囲まれた高台に突如現れるのが「禅坊 靖寧」だ。うっそうとした森の中に橋げたが突き出したようなインパクトのある木造建築で、自然の景観を損なわない設計により、空中に浮かんでいるように見える。

 約3000平方メートルの広大な敷地に建つ施設は、1階の宿坊風個室と食堂、2階の座禅・ヨガ用空間から構成される。中でも国産杉を組み合わせて作った全長約100メートルの直線的なウッドデッキが印象的だ。2階へは内部の階段からも行けるが、北側の大階段ともつながっていて、階段を上るときから高揚感を味わえる。さらに、2階のウッドデッキに立ったときの開放感と爽快感は、他ではなかなか体験できないものだ。

全長約100メートル、幅3.6メートルの展望ウッドデッキのうち、禅デッキは長さ33.12メートル。鉄骨丸柱を3メートルピッチで設置したダイナミックな開口部からは360度に広がる絶景を楽しめる
全長約100メートル、幅3.6メートルの展望ウッドデッキのうち、禅デッキは長さ33.12メートル。鉄骨丸柱を3メートルピッチで設置したダイナミックな開口部からは360度に広がる絶景を楽しめる

 驚くのは、2階展望デッキの開口部に天井以外ほとんど視界をさえぎるものがなく、360度見渡せること。この抜け感と透明感を出すために、設計上のさまざまな工夫がなされている。

 12センチ幅の鉄骨丸柱を3メートルピッチで設置して筋交(すじかい)をなくし、しかも大きな梁(はり)を使わないことで内と外の連続性を保っている。さらに、デッキの周囲を段状に下げることにより、デッキに座っても周囲の手すりが視界に入らないようにした。開口部は全面オープンになっているため、悪天候や冬期の営業が心配されるが、雨戸のような折りたたみ式のガラス窓が収納されていて、急な天候変化にも対応可能だ。デッキには床暖房も備わっている。

エントランスから2階ヨガテラスへと続く大階段を上がると仏像が出迎える
エントランスから2階ヨガテラスへと続く大階段を上がると仏像が出迎える

 設計を担当した建築家の坂茂氏によると「人は普段、下から木々を見上げているが、建物の中にいる威圧感がなくなり、宙に浮かぶように上から木々を見下ろせれば、鳥のさえずりに囲まれて非日常的な場に身を置ける。空中で座禅を組むためにはどんな空間をつくればいいのか自問し、そんな考えに至った」としている。

 ウッドデッキで行われる瞑想(めいそう)体験に参加してみると、確かに建物の中ではなく、まるで森の中に1人存在しているかのようだった。風が吹いて揺れる木々のざわめきや野鳥のさえずり、ウシガエルや虫の鳴き声などが間近に聴こえ、大自然がすぐそばにあることを体感できた。

大自然との一体感が味わえる座禅やヨガを体験できる。オリジナル料理と茶道、書道、香道を取り入れた日帰りのデトックス&リトリートプランは4時間2万3000円(税込み)
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