“ステルスゲーム”「METAL GEAR(メタルギア)」を生み出し、世界中に熱烈なファンを抱える小島秀夫氏。独立後の初作品となる「DEATH STRANDING(デス・ストランディング)」は、2019年11月8日の発売からすでに3年近くが経過しているのにもかかわらず、いまだ多くのファンが熱狂している。分断された世界や人を荷物を運びながらつないでいくゲーム性は、偶然にもコロナ禍における世界の変化にもリンクする。19年にインタビューをしてから3年弱、コロナ禍を経て小島氏は今、何を思うのか。ロングインタビューの前編は、ゲームに込められた思いとその変化、そして新しいコミュニケーションの形について聞く。

ゲームクリエイターで、コジマプロダクション代表の小島秀夫氏にロングインタビューを実施。小島氏は、1963年東京都生まれ。86年コナミ入社。98年にPlayStation向けのゲーム「メタルギアソリッド」を開発して大ヒット。ステルスゲームと呼ばれるジャンルを切り開き、世界中で熱狂的なファンを生む。2015年末に独立してコジマプロダクションを設立。19年には新作ゲーム「DEATH STRANDING(デス・ストランディング)」をPlayStation4向けに発売した
ゲームクリエイターで、コジマプロダクション代表の小島秀夫氏にロングインタビューを実施。小島氏は、1963年東京都生まれ。86年コナミ入社。98年にPlayStation向けのゲーム「メタルギアソリッド」を開発して大ヒット。ステルスゲームと呼ばれるジャンルを切り開き、世界中で熱狂的なファンを生む。2015年末に独立してコジマプロダクションを設立。19年には新作ゲーム「DEATH STRANDING(デス・ストランディング)」をPlayStation4向けに発売した

 「事務所もない、スタッフもいない、信用も金もない、まさに何もない状態だった」。3年弱ほど前の2019年10月に公開した記事で、ゲームクリエイターの小島秀夫氏は独立スタジオ設立当時に関してこう語った。

▼参考記事 小島秀夫氏が挑む 新型ゲーム「デス・ストランディング」の勝算

 前回のインタビューからさらに遡ること4年、15年12月に小島氏はコナミを退社し、独立スタジオを設立すると宣言。ソニー・コンピュータエンタテインメント/SCE(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント/SIE)との新ゲームの契約締結も合わせて発表され、世界中に“潜伏”するコジマファンは熱狂した。

 それから4年弱の時を経て、新作ゲーム「DEATH STRANDING(デス・ストランディング)」が19年11月8日に誕生。世界を自在に歩き回れるオープンワールド形式のゲームで、国家が崩壊し分断された北米大陸を舞台に主人公である運び屋サムになって旅をし、指定の場所に物資を輸送しながら「カイラル通信」と呼ばれる通信網を接続して人や都市をつなげていく。戦うことを主目的としない、つながりを取り戻すことがメインの全く新しいジャンルのゲームだ。

人々や都市が分断されている北米大陸が舞台。主人公のサムとなって分断された地域に物資を届け、「カイラル通信」で接続。再び世界をつなげるのが主な目的となっている。オープンワールド形式のため、メインストーリーをクリアした後も、自由に遊べる
人々や都市が分断されている北米大陸が舞台。主人公のサムとなって分断された地域に物資を届け、「カイラル通信」で接続。再び世界をつなげるのが主な目的となっている。オープンワールド形式のため、メインストーリーをクリアした後も、自由に遊べる

 AAA(トリプルA)と呼ばれる大型ハイエンドゲームの業界は、大資本を背景に力を持つ大手メーカーの独壇場。「個人や独立系のプロダクションは小規模なインディーズゲームが主戦場で、過去に成功した者はいない。個人では到底できっこないという声ばかりだった」と、前述のインタビューで小島氏は語った。その前人未踏のチャレンジをしたのが、デス・ストランディングだ。

 21年3月の時点で、PlayStation4版とPC版の累計販売数は全世界で500万本を突破。21年9月には、新要素を追加した「DEATH STRANDING DIRECTOR'S CUT」のPS版を投入し、22年3月にはさらにグラフィックなどを大幅に更新したPC版も発売した。発売から3年弱、今なお多くのファンの心を捉え続けているロングセラーとなっている。

「DEATH STRANDING DIRECTOR'S CUT」のキービジュアル
「DEATH STRANDING DIRECTOR'S CUT」のキービジュアル

 デス・ストランディングが発売されて約2年の間に、世界は大きく変わった。コロナ禍が人々の物理的なつながり、そして交流を分断。オンライン化が加速し、くしくも小島氏が描いたつながりの重要性を改めて認識することになった人も多いはずだ。人々はカイラル通信(編集部注:作品に出てくる大容量のデータを遅延なしで送受信できる通信)を必要とするかのごとく、ビデオ会議システムやメタバースなど、新しいコミュニケーション手段を追い求め、活用し、まさにニューノーマルを模索した。小島氏は「もちろん、こんな事態が起きるとは全く予想をしていなかった」と語るが、改めて今の世界をどう見ているのか、再びインタビューに向かった。

コロナ禍でコミュニケーション密度が大きく下がった

――改めてこの3年間の世界の変化、環境の変化をどう捉えていますか?

小島秀夫氏(以下、小島) 独立が15年12月ですので、そこから見るともう7年近くがたちました。とにかく必死にデス・ストランディングをつくってきて、19年に発売した後に訪れたのがコロナ禍の世界です。あぜんとしました。スタッフもリモート出社が基本で、あいさつで顔合わせをしてから一度も会ってない人もいる状態になりました。

 米国での収録にも行くことができず、リモートにならざるを得ない。この2年間ずっとです。コミュニケーションの密度が今までとは全く違います。

 本来、僕の仕事の仕方は、人付き合いというか、つながりがベースにあるんです。それが日常。いろんなクリエーターに会って、刺激し合ってものづくりをしていく。出会いを繰り返しながら、自分の足元を確かめていくんです。

 独立当時、まさに事務所もない、スタッフもいない、信用も金もない、何もない状態でした。けれど、その際に一緒にやりたいと言ってくれる人、応援してくれる人がいて、人とのつながりだけは残っていると気付きました。だからこそ、デスストもつながりをテーマにつくったわけです。今の仕事の仕方は本来の形ではない。正直、元に戻ってほしいと思っています。

――デス・ストランディングでは、各地を回り、カイラル通信をつないでいくことでコミュニケーションが復活していく、世界がつながっていきました。コロナ禍では、多くの人がオンラインによるつながりを求め、その重要性も認識したのではないでしょうか。

デス・ストランディングでは、荷物を届けるのに加え、通信網を接続することも重要な要素に
デス・ストランディングでは、荷物を届けるのに加え、通信網を接続することも重要な要素に

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