卸・仕入れに特化したBtoB(企業間取引)ECモール「NETSEA(ネッシー)」を運営するSynaBiz(東京・品川)は、自社ECサイトを広告媒体化する「リテールメディア」戦略を強化している。2021年に新たなシステムを導入し、広告取引を自動化したことで、モール上のあらゆる検索行動の広告収益化が可能になった。購買データとひもづいた配信で、効果も向上。早くも従来の広告と比較し、広告経由の購入率が7倍、SynaBizが得た広告収益は5.5倍になるなど、大幅な売り上げ増加につながっている。

卸・仕入れBtoB(企業間取引)ECサイト「NETSEA」のトップページ
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 小売企業の新たな収益源として、自社で所有する会員データや購買データなどの、「ファースト・パーティー・データ」を活用した新事業に注目が集まっている。その1つとして期待されるのが、ECサイトや実店舗を広告媒体化する「リテールメディア」だ。

 取扱商品のカテゴリーやブランド数が多いECモールやスーパーマーケットは、出店企業や商品を卸すメーカーが自社商品を目立たせて、売り上げ増加につなげる販促機会を探っている。しかも、小売業者には豊富な購買データがある。このデータを用いた広告事業を展開することで、広告収益という新たな収益源につながる可能性がある。

 実際、大手ECモール「楽天市場」や「Amazon.co.jp」、ファッションEC「ZOZOTOWN」、米大手スーパーのウォルマートなど、国内外で多くの小売事業者が広告事業による収益化に取り組んでいる。楽天グループの2021年12月期の年間広告の売上高は、前年比22%増の1579億円、ZOZOTOWNを運営するZOZOの22年3月期の広告売上高は、同52.9%増の63億100万円とそれぞれ好調に推移している。

 大手事業者だけでなく、リテールメディア化をサポートする専用サービスの登場により、あらゆる規模のECサイト、実店舗においても広告事業による収益化の可能性が広がってきた。ネットオークションの価格比較サイトを運営するオークファンの子会社で、インターネット卸・仕入れモールのNETSEAを運営するSynaBiz(東京・品川)も、そうしたサービスの導入によりリテールメディア戦略を強化する1社だ。

 NETSEAは、オンラインでサプライヤー(メーカー、問屋、卸売会社)と、バイヤー(小売店、ネットショップ、輸出業者)が商品を売買できるBtoB(企業間取引)ECモール。22年3月時点で、約4500社のサプライヤーが商品を販売し、約48万社のバイヤーが商品の仕入れを行っている。

 NETSEAオークションを含む年間取引総額は、約100億円。モール内で取り扱われる商品が多いことから、サプライヤー間の競争力を高めるため13年頃から広告事業を展開してきたが、21年にリテールメディアに特化したサービスを導入。検索連動型広告の強化に乗り出した。購買データに基づく配信で、マッチング精度を向上させ、広告収益を最大化するのが狙いだ。

広告売り上げは全体の2割 伸びしろある事業に成長

 NETSEAは、利用者が検索窓に入力したキーワードに応じて、適した商品を広告として表示する「検索連動型広告」に、20年から取り組み始めた。新型コロナウイルス禍により対面での営業や仕入れが難しくなったことを受け、オンラインで取引が完結するNETSEAを利用するサプライヤー、バイヤーともに急増したからだ。

新型コロナウイルス禍を受け、NETSEAの需要が拡大。新型コロナが発生した2020年以降も流通額が伸び続けている
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 だが、広告ニーズの増加につれ、徐々に従来の仕組みではその需要に応えきれなくなってきた。広告管理をすべて手動で行っていたのがその理由だ。

 SynaBizではもともと、検索クエリー(バイヤーが検索窓に入力した単語、フレーズ、複合語など)からバイヤーのニーズを把握。それを基にSynaBizの営業担当が広告枠を表示するキーワードを決めて、サプライヤー側に販売したり出稿主を決定したりするなど、キーワードの選定から運用まですべて手動で行っていた。見かけは検索連動型広告だが、実質的には枠売りと変わらなかった。出稿は3000円からの入札形式となっており、一番高い金額で入札をしたサプライヤーが出稿枠を確保できるサービスとして展開していた。

 新型コロナ禍での需要拡大を受け、広告収益はSynaBizの売り上げの2割を占める規模にまで成長したが、属人的な仕組みでは収益化に限界があった。人的リソースの問題で入札キーワードとして指定できるのが1カ月当たり100個までという制限があったため、ニーズはあっても入札対象から外れてしまうキーワードが出始めたのだ。

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