PRステッカーを貼ったマイカーでドライブするだけで稼げる――。そんな斬新な広告サービスを展開するチアドライブ(東京・中央)が、ドコモ・インサイトマーティング(東京・豊島)が提供する人流データを活用し、より精緻なリーチ数を基にした広告モデルを開発、2022年7月から提供を始めた。将来的には「自宅に駐車しているだけで得するサービス」に発展する可能性もあるという。

ドアにPRステッカーを貼ったマイカーのイメージ
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 「マイカーに『いばらきメロン』のPRステッカーを貼って300キロメートル走行したら、メロン1玉プレゼント!」

 2022年7月12日から、こんな斬新なPRキャンペーンの募集が茨城県や東京都を対象に始まった。街中で多くの人の目に触れるマイカーを広告媒体とすることで、普段通りのマイカー利用を“得する移動”に変える仕掛けだ。

 この広告サービスを展開するのは、20年8月設立のスタートアップ、チアドライブ(東京・中央)。キャンペーンを実施したい企業や自治体などと、それに応募したいドライバーをマッチングする「Cheer Drive(チアドライブ)」を運営する。現在、登録ドライバーは1万5000人を超え、これまで42件のPRキャンペーンが展開されてきた。

Cheer Driveのサービスモデル
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 キャンペーンの方向性は「支援型」と「報酬型」の大きく2つある。支援型とは、主にアニメやゲーム、スポーツチームなどのファンに向けた企画。参加者はマイカーにステッカーを貼ることで世間に自分の好きなコンテンツをPRできるうえ、限定アイテムや選手着用のサイン入り練習着などの特典を得られる。いわば「推し活」だ。

 支援型の場合、PR実施費用の多くは参加料としてドライバーが負担する。例えば、バンダイナムコエンターテインメントが人気コンテンツの「アイドルマスター」に関連して22年6月に始めたキャンペーン。参加費が9000円(税込み)で、全員にオリジナルステッカーをプレゼントするほか、500キロメートル走行でオリジナルのポロシャツがもらえるというものだ。

22年6月から募集を始めた「アイドルマスターシリーズ『VOY@GER』応援キャンペーン 第2弾」のPRステッカーのイメージ
22年6月から募集を始めた「アイドルマスターシリーズ『VOY@GER』応援キャンペーン 第2弾」のPRステッカーのイメージ
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 参加するファンにとっては、限定グッズがもらえるうえ、「PRステッカーをマイカーに貼ることで、簡単に“痛車(イタシャ)”ができる点も受けている。ステッカーは素人でもミスせず貼れて、はがすときも車体に影響がないものを開発している」(チアドライブ社長の保科昌孝氏)という。

 こうして既存ファンとのつながりを深める施策となると同時に、ステッカーを貼ったクルマが街中を走ることで新規顧客への訴求もできる。お金を払ってまで参加したい熱量の高いファンを抱える企業にとっては、低コストで認知を広げる手段の一つとなっている。

 もう一方の報酬型は通常の広告モデルで、キャンペーン実施企業が参加ドライバーの報酬を広告費として負担する。参加者はいつものドライブをするだけで5000~8000円程度の報酬を得られる。例えば、駐車場予約アプリの「akippa」が行ったキャンペーンは、参加費1000円、走行距離1000キロメートルを上限に1キロメートル当たり5円を付与する設計だった。参加費を差し引くと、ドライバーは最大4000円を手にできる計算だ。

 ちなみに、報酬型でも参加費を徴収するのは、ステッカーを確実に貼ってもらうための工夫。ある程度走行しないと元が取れないというわけだ。ドライバーはCheer Driveアプリで走行開始時と終了時に車体と走行メーターの写真を撮って送る必要があるので、そもそも不正はしにくい仕組みではある。

人流データ活用で広告効果の判定精度をアップ

 広告サービスとしてのCheer Driveの魅力は、街中を縦横無尽に走るマイカーをPR媒体に変えることで、これまでの固定型サイネージ(電子看板)ではリーチできない人にまで認知を広げられることだ。PRステッカーはリアウインドーにも貼られるため、後続ドライバーにもしっかりアピールできる。この点は、「自動車保険やカーグッズなど、ドライバー向けの商品・サービスを扱う企業から評価を得ている」(保科氏)。

リアウインドーにもPRステッカーを貼る。シースルーステッカーなので、運転時の後方確認に支障はない
リアウインドーにもPRステッカーを貼る。シースルーステッカーなので、運転時の後方確認に支障はない
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 同種のサービスとしてはタクシーやバスのラッピング広告もあるが、「リーチ単価で考えれば、都内のタクシーラッピング広告が0.6~0.7円なのに対して、Cheer Driveは都市部で0.4円からと、低コストで運用可能」(保科氏)という。

 また、Cheer Driveには様々な車種のマイカーが参加するため、広告をまとった“レアカー”として見た人の印象に残りやすく、SNSでの拡散も期待できる。例えば、ソニー・ピクチャーズが映画『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』の公開記念で行ったキャンペーンでは、参加ドライバーがステッカーを貼った愛車を撮影し、Twitterに投稿するとトートバッグをプレゼントする企画を実施し、数百の投稿があったという。人気コンテンツなら、街中で見かけた人が写真を撮って自主的にSNSへアップしてくれる確率も高まるだろう。

 ところが、だ。従来チアドライブは「走行距離」を基にしたキャンペーン設計を行っていたため、その広告効果について課題が出てきた。それは、「どこを走っているのか分からないマイカーで、本当に多くの人にリーチできているのか」という問いだ。出稿企業にとっては、早朝深夜の高速道路を走っても、日中の市街地を走っても「同じ広告効果」とは見なせない。

 そこでチアドライブが頼ったのが、ドコモ・インサイトマーケティング(東京・豊島)だ。同社が提供する「モバイル空間統計」はNTTドコモの基地局ごとに集計した、ある特定のタイミングにおける携帯電話の台数にドコモの普及率を掛け合わせて人流を推計するもの。これで得られる24時間365日の全国の人口ヒートマップデータを実際の走行ルートと掛け合わせれば、より正確に推計リーチ数を割り出せるというわけだ。

10段階の色分けで人口ヒートマップを示すモバイル空間統計
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