アサヒビールがお酒を飲めない人を対象としたバーを東京・渋谷にオープンした。その名も「SUMADORI-BAR SHIBUYA(スマドリバー シブヤ)」。大半の商品でアルコールの度数を0%、0.5%、3%の3つの中から選べるのが特徴だ。アサヒビールの子会社スマドリ(東京・墨田)が運営する。バーの運営では、「LINE」と連係した注文システムなどを導入し、飲めない人の購買データなどを取得してアサヒビールの商品開発などに生かしていく。

飲めない人向けのバー「SUMADORI-BAR SHIBUYA」がオープン。飲めない人の消費者行動データを取得する場として、重要な拠点となる
飲めない人向けのバー「SUMADORI-BAR SHIBUYA」がオープン。飲めない人の消費者行動データを取得する場として、重要な拠点となる

 スマドリ(東京・墨田)はアサヒビールと電通デジタル(東京・港)が22年1月に設立した共同出資会社。同社は、体質などでアルコールが飲めない、あるいは飲める量が限られるような「飲めない人」を対象としたマーケティング活動のために設立された。SUMADORI-BAR SHIBUYAは同社にとって、最初の具体策となる。

 アルコールが飲めなくても、酒席の場を楽しみたい─―。SUMADORI-BAR SHIBUYAはそんな飲めない人のためにつくられたバーだ。場所は東京・渋谷のセンター街。メインターゲットは20歳以上のZ世代からミレニアル世代といわれる若年層だ。酒を飲めない人でも「飲みに行こう」と誘える。そんな空間をコンセプトにしている。スマドリが推進する「スマートドリンキング」という考え方を体験できるバーとなっている。

 商品はその象徴だ。同じドリンクでもアルコール度数を0%、0.5%、3%の3種類から選べる。これまで、酒席においてアルコールを飲めない人が頼める商品は、ウーロン茶やジンジャーエールなど、いわゆるソフトドリンクメニューだけと選択肢が限られていた。スマドリバーでは同じ商品でもアルコール度数を自由に選べるため、飲める人と飲めない人が同じ商品を楽しみながら、酒席を囲めるメニュー構成になっている。営業時間は正午から午後10時までで、ドリンクはテークアウトも可能。フードメニューも充実させるなど、カフェ利用も見越している。

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 スマドリバーは単に酒を飲まない人・飲めない人を対象としたお店であることだけが特徴ではない。スマドリが電通デジタルとの共同出資会社である強みを生かし、大きく2つの軸でデジタルを活用する。1つ目は「データ取得」だ。スマドリバーは、飲めない人の消費者行動データを取得する場として重要な拠点となる。そのために「LINE」を活用する。とりわけ重要なのは購買データだ。その収集には、「LINE公式アカウント」で利用できるミニアプリ「CX ORDER」を活用する。

 CX ORDERは飲食店が導入することで、来店者が持つスマートフォンにインストールされたLINEを注文端末代わりに活用できるサービスだ。来店者はQRコードをLINEのカメラ機能で読み取ると、LINE上にメニューの一覧が表示される。その中から、好きな商品を選んでカートに入れ、決済をすると注文が完了する。アプリ開発支援などを手掛けるクラスメソッド(東京・千代田)が開発している。

 スマドリではこのシステムを導入した。来店者はQRコードをLINEのカメラ機能で読み取ることから体験が始まる。複数人で来店しても共通のQRコードを読み取ることで、1人ずつLINE上で注文できる。スマドリバーでは注文をすべてLINE経由で受け付ける。一般的な飲食店のように、店員が注文を聞くようなことはしない。これにより、LINEを通じて一人ひとりから、アンケートや注文履歴を通じてデータを取得できるようにした。

 QRコードを読み取ると、最初に簡単なアンケートが表示される。例えば、飲酒可能なアルコール量や飲み会の好き嫌い、性別、年齢といった具合だ。

QRコードを「LINE」のカメラ機能で読み取った後、簡単なアンケートに回答するとメニュー一覧が表示される
QRコードを「LINE」のカメラ機能で読み取った後、簡単なアンケートに回答するとメニュー一覧が表示される

 これらのアンケートに答えるとメニュー画面に遷移する。注文する際は、メニュー一覧から商品を選んだあとに、アルコール度数を選択して決済する。支払い方法はオープン時点ではLINEのモバイル決済サービス「LINE Pay」、クレジットカード、現金の3種類にのみ対応している。

 LINEの注文アプリ経由で取得したアンケートデータや購買データを分析することで、来店者のアルコール耐性や、飲酒に対する意識などの傾向が見えてくる可能性がある。また、付随して、アルコール耐性が低い人に好まれるメニューは何か、性年代ごとに特徴的な飲酒傾向があるかなどの分析につながる。

商品の多くはアルコール度数を0%、0.5%、3%の3つから選べるのが特徴。お酒を飲める人、飲めない人が同じ商品を楽しみながら酒席を囲める
商品の多くはアルコール度数を0%、0.5%、3%の3つから選べるのが特徴。お酒を飲める人、飲めない人が同じ商品を楽しみながら酒席を囲める

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