フランスのマクロン大統領が、主要な政策として掲げる「フレンチテック」。その実現に向けて重要な役割を果たすのが、2016年からフランスで開催されているテックカンファレンス「Viva Technology」だ。大手企業とスタートアップ企業が手を組みどのような課題解決を行っているのか、参加者はその最先端の取り組みをじかに感じることができる。今回が4回目の参加となるヤプリのエグゼクティブスペシャリスト 伴大二郎氏が、フランス老舗企業のLVMHとロレアルの取り組みを中心に、イベントの模様をリポートする。

2022年6月15~18日、仏パリで開催された「Viva Technology」。例年、マクロン大統領自ら登壇することでも知られている
2022年6月15~18日、仏パリで開催された「Viva Technology」。例年、マクロン大統領自ら登壇することでも知られている

 欧州最大級のテックカンファレンス「Viva Technology(ビバ・テクノロジー)」が2022年6月15~18日、仏パリで開催された。16年から行われている同イベントを主催するのは、欧州最大にして世界第3位の広告代理店である仏ピュブリシス・グループと、仏LVMHグループ傘下のメディア企業である仏レゼコー・ル・パリジャングループ。同イベント4回目の参加となる筆者が、なぜ老舗企業であるLVMHと仏ロレアルは、スタートアップと組みながらデジタル戦略を推進するのかについて解説する。

22年の「LVMHイノベーションアワード」受賞企業は?

会期中は世界各国から参加者が集結し、ブースを回ったり、セッションを聴講したりした
会期中は世界各国から参加者が集結し、ブースを回ったり、セッションを聴講したりした

 Viva Technologyは、マクロン仏大統領の主要な政策の1つ「フレンチテック」(フランスをスタートアップ大国に変革させるプロジェクト)に欠かせないカンファレンスだ。イベントが始まった16年から毎年、マクロン大統領自らが登壇することでも話題を呼んでいる。例年通り22年もマクロン大統領が登壇し、会場は大いに盛り上がった。

 マクロン大統領は演説の中で、「25年までに、フランス発のユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)を25企業輩出することを目標にしてきたが、すでに27のユニコーン企業が誕生している。そのため新たに、30年に向けて少なくとも100のユニコーン企業を輩出するという目標を打ち立てた。実現に向け、5年間で300億ユーロを投資する計画だ」と力強く述べた。

 Viva Technologyは、大企業とスタートアップによるオープンイノベーションをテーマとしたカンファレンスだ。中でも、フランスの大企業であるLVMH、ロレアル、カルフールなどが、スタートアップをパートナーとして迎え、どのように協働しているのか実情が語られるのも魅力の1つである。

 期間中に行われるイベントの中で、私が毎年楽しみにしているのが「LVMHイノベーションアワード」だ。LVMHグループと傘下メゾン(ブランド)が取り組む課題解決に対して、スタートアップ企業各社が自社のソリューションを紹介し、競うというもの。アワードは、評価額1億ドル未満、従業員数50人未満、過去5年以内に創設されたスタートアップを対象にしている。受賞したスタートアップは、LVMHグループの投資専門家による支援とアドバイスを受けられるだけでなく、LVMHと傘下メゾンとのパートナーシップを組むことができ、より事業を発展させられる。

 過去には、ディープラーニング(深層学習)を活用した画像分析技術に強みを持つ仏ヒューリテック、Eコマースソリューションを提供する仏オイスト、サプライチェーン向けのブロックチェーンソリューションを提供する中国のヴィチェーン、顧客ロイヤルティー向上を目指す仏クロノスケアが受賞しており、LVMHグループやその他の企業で幅広く活用されている。

 22年の LVMHイノベーションアワードには、75カ国の950を超えるスタートアップ企業から応募があり、大賞には、17年に英ロンドンで設立されたトシが選ばれた。トシが提供するのは“Wait and try”と呼ばれるソリューション。ECの利用増加によって加速度的に増えた返品問題に対し、「少し購入を待ち、先に試着や実物を見る」ことで、返品率向上の実現を目指すというサービスである。

「LVMHイノベーションアワード」でLVMH会長兼CEOのべルナール・アルノー氏(左)と、受賞したトシの創業者兼CEOリ・ソジン氏(右)
「LVMHイノベーションアワード」でLVMH会長兼CEOのべルナール・アルノー氏(左)と、受賞したトシの創業者兼CEOリ・ソジン氏(右)

 企業は、ECサイトに1行コードを挿入するだけで導入できる。ユーザーは、同ソリューションが導入されたECサイトを利用する際、例えば、自宅や職場などの場所を指定すると、直接スタッフが商品を持ってきてくれ、その場で接客やフィッティングサービスを受けられるというものである。その際、スタッフが公共交通機関や電気自動車など、環境に配慮した交通手段を選択するところも特筆すべき点といえる。

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