「いろいろなブランドの服を試着して比較検討したい」「買い物する時間がないので効率よくショッピングしたい」――。ショッピングモールを利用する消費者のこんなわがままにも対応する新サービスが、2022年5月26日、JR大阪駅に直結する駅ビル「ルクア大阪」に登場した。シェアブティック「E SALON(イーサロン)」だ。

JR大阪駅の駅ビル「ルクア大阪」に開業した日本初のシェアブティック「E SALON」。オンラインショップの在庫を予約して試着するサービスはあるが、商業施設のテナントの在庫を一度に試着できるのは画期的
JR大阪駅の駅ビル「ルクア大阪」に開業した日本初のシェアブティック「E SALON」。オンラインショップの在庫を予約して試着するサービスはあるが、商業施設のテナントの在庫を一度に試着できるのは画期的

専用アプリで試着を予約。類似商品も提案

 「イーサロン」は、駅ビル「ルクア大阪」の入居ブランドの中から好きな商品を選び、一度にまとめて試着できるサービスだ。出店場所はルクア大阪の西館・LUCUA 1100(ルクアイーレ)の5階。ネット通販大手の米アマゾン・ドット・コムも2022年5月25日、米ロサンゼルスに初のアパレル専門店「Amazon Style(アマゾン・スタイル)」を開業したばかり。それだけに、ショッピングモールというリアルなプラットフォームを最大限に生かしたサービスに関心が集まっている。

 イーサロンの一番の特徴は、館内で販売されている洋服を一度に15点までまとめて試着できる点。ルクア大阪には、ファッションとシューズを扱う店が250店舗近くあり、そのうちイーサロンで試着可能なのは38店舗(22年7月7日現在、準備中の店舗を含む)。ジャーナルスタンダードやスピック&スパン、アーバンリサーチなどの人気ショップが顔をそろえる。

 試着は通常、各店舗で行うため同時に比較検討できないが、イーサロンなら異なるブランドであってもその場でコーディネートでき、カップルや家族で試着室に入ることも可能だ。ブランドの垣根を越えた、消費者にとってはまさに夢のようなサービスといえる。

 利用の流れはこうだ。まず、イーサロン専用アプリをスマートフォンにダウンロードし、館内の加盟店で店舗識別用のQRコードをスキャン。続いて店内で気になる商品を見つけたら、商品タグを撮影し、希望のサイズとカラーを確認してから「ワードローブ」のお気に入りに登録する。その他、専用アプリから気になる商品を見つけて登録しておくこともできる。

イーサロンのサービス加盟店の店頭に置かれた案内パネル。専用アプリをダウンロードし、ショップの店舗識別QRコードを読み込む
イーサロンのサービス加盟店の店頭に置かれた案内パネル。専用アプリをダウンロードし、ショップの店舗識別QRコードを読み込む
店内で気になる商品を見つけたら、とりあえず、商品タグのバーコードから商品を読み込み、ワードローブのお気に入りに登録
店内で気になる商品を見つけたら、とりあえず、商品タグのバーコードから商品を読み込み、ワードローブのお気に入りに登録

 試着したいアイテムを選択したら、イーサロンに行って受け付け。すると、「ポーター」と呼ぶスタッフが加盟店まで希望の商品を引き取りに行ってくれる。そして試着の順番が来ると、広々としたプライベートのフィッティングルームに商品が用意され、自由に試着ができる。気に入った商品は、再度店まで足を運ばなくても、その場でまとめて購入できるという具合だ。

 「レジやフィッティングで並んだり、広い施設でいろいろなブランドを見て回ったりすると余計な時間がかかる。従来の買い物時間の概念を変え、新しい時代の買い物スタイルを提案するサービス」と、イーサロンを展開するSRL(福岡市)の新田寛之CEO(最高経営責任者)は胸を張る。

試着の順番になると、イーサロンのレセプションでアプリを表示してフィッティングルームへ。今後はコーディネートも提案していく予定
試着の順番になると、イーサロンのレセプションでアプリを表示してフィッティングルームへ。今後はコーディネートも提案していく予定
登録した商品の中から試着する商品を選択。フィッティングルームには15点まで持ち込める。試着受け付け後、在庫やサイズを店のスタッフに確認しなくても、指定した商品がイーサロンでまとめて試着できる
登録した商品の中から試着する商品を選択。フィッティングルームには15点まで持ち込める。試着受け付け後、在庫やサイズを店のスタッフに確認しなくても、指定した商品がイーサロンでまとめて試着できる
広々としたフィッティングルームでは、家族や友人らとも気兼ねなく試着を楽しめる
広々としたフィッティングルームでは、家族や友人らとも気兼ねなく試着を楽しめる

 ユニークなのは、気になる商品を登録すると、他ブランドの類似商品もアプリが提案してくれる点だ。顧客にとっては知らなかったブランドや着てみたかったブランドとの偶然の出合いにつながり、買い物の選択肢が増える利点がある。一方の店舗側にとっては、類似商品のブランドに顧客が流出する恐れはあるが、その逆の流入もある。

 「とにかく顧客に面白いと思ってもらい、施設に足を運んでもらうことが大切」と新田CEO。この数年、ネット通販に押されてきた“リアル店舗の逆襲”ともいえる斬新な仕組みだろう。

商品を登録すると、全加盟店の商品の中から類似した商品が選ばれて表示される。薦められた商品もアプリ上で試着選択が可能。いずれはAI(人工知能)がコンシェルジュのようにお薦めしてくれる機能も検討している
商品を登録すると、全加盟店の商品の中から類似した商品が選ばれて表示される。薦められた商品もアプリ上で試着選択が可能。いずれはAI(人工知能)がコンシェルジュのようにお薦めしてくれる機能も検討している

この記事は会員限定(無料)です。

17
この記事をいいね!する