ファミリーマートが本格的に始めたコーヒーとパンや洋菓子とのフードペアリングの提案。相性の良さを裏付けるデータ分析を支えたのが、“青汁の会社”として知られるキューサイ(福岡市)の研究施設だった。ファミマのように商品の味分析をマーケティングに生かす企業が増加しており、その3つの狙いを探った。

ファミリーマートが開始したアイスコーヒーとコーヒーあん&ホイップのフードペアリング
ファミリーマートが開始したアイスコーヒーとあんパンのフードペアリング。相性をデータで分析し、販売促進に生かす

 ファミリーマート(以下、ファミマ)は2022年6月7日から、店舗でいれる「ファミマカフェ」の主力商品であるアイスコーヒーとアイスカフェラテをリニューアルし、全国で発売した。ブラジル産の豆の割合を増やし、コーヒーの“コク”を前面に押し出した商品だ。

ホームページで「コクの最高傑作」と押し出したファミリーマートのアイスコーヒーとアイスカフェラテ(写真/ファミリーマート提供)
ホームページで「コクの最高傑作」と押し出したファミリーマートのアイスコーヒーとアイスカフェラテ(写真/ファミリーマート提供)

 最大の特長は、コーヒーやカフェラテの味に合わせたパンや焼き菓子を発売し、味覚調査を基にした「フードペアリング」を訴求したこと。両者が同じファミマカフェの豆を使用することで、無理なく味のバランスをとった。パンや焼き菓子は、コーヒーあん&ホイップパンが128円(税込み、以下同)、コーヒーフィナンシェが138円、コーヒーバウムクーヘンが168円などの計6種類をラインアップ。こうした味覚調査を利用したフードペアリングは、ファミマ初の試みという。

 フードペアリングの狙いは何か。同社商品本部 FF・スイーツ部 カフェ・スチーマーグループの松田香織氏は「それぞれの商品の味を分析して数値化することで、商品の特長を説明しやすくなるだけでなく、他社商品と差別化もしやすいといった狙いがある」と明かす。

 例えば、データ上ではコーヒーのうまみ成分が強く出ており、強みとする「コク」の裏付けになっている。パンや焼き菓子のパッケージにはアイスコーヒーやアイスカフェラテが描かれ、ドリンクとのフードペアリングを消費者が理解しやすい。実際、効果は数字にも表れており、パンや焼き菓子との併売率が109%に伸長したという。

アイスカフェラテとコーヒードーナツの組み合わせ(左)。右はコーヒードーナツのパッケージ
アイスカフェラテとコーヒードーナツの組み合わせ(左)。コーヒードーナツのパッケージの右上にはコーヒーが描かれ、フードペアリングを意識したデザインになっている(右)
同社商品本部 FF・スイーツ部 カフェ・スチーマーグループの松田香織氏
フードペアリングを企画した、ファミリーマート商品本部 FF・スイーツ部 カフェ・スチーマーグループの松田香織氏

青汁のキューサイが提供する「味分析サービス」をマーケに活用

 ファミマが分析に利用したのが、2003年に発足したキューサイ分析研究所(福岡県宗像市)の味分析サービスだ。キューサイというと、健康食品メーカーの中でも“青汁の会社”というイメージが強い。青汁の原料であるケールの“農薬不使用”を担保するための残留農薬検査などを行う研究所がグループ内にあり、外部からの調査も請け負っているのだ。

 14年に商品の味分析サービスをスタートし、蓄積したデータを生かして「味のマリアージュ(ペアリング)サービス」を19年に追加した。味分析サービスは大手からベンチャーまで国内で多数の企業が手掛けているが、ファミマがキューサイに依頼したのは「チョコレート菓子とコーヒーのフードペアリングについての分析実績が多数あったため」と松田氏。

 キューサイ分析研究所の味分析は、人間の舌と同じメカニズムの味覚センサーが付いた味認識装置を使用し、さまざまな商品の味を8つの味覚に分けて数値化する。8つの味覚とは、口に食べ物を入れた瞬間に感じる“先味”に当たる「酸味」「塩味」「旨味」「苦味雑味」「渋味刺激」の5つと、食べ物を飲み込んだ後も口の中に残り続ける“後味”に当たる「旨味コク」「苦味」「渋味」の3つだ。「甘味」を調べたい場合は、別の装置を使用して対応する。

 8つの味覚といっても、幕の内弁当のような多くの物質や成分が混在したデータを数字だけで判断すると、実際に人間が食べたときの感覚と大きくズレる可能性がある。そうした乖離(かいり)を避けるため、「数人~数十人規模の社員が実際に食べる官能評価のデータを必ず加え、商品の特徴を決定する」と同研究所のおいしさコンサルティンググループの肥田崇氏は言う。

 分析結果はリポートにして企業に提出する。表やレーダーチャート(以下のサンプルでは5角形)を作成して視覚的に分かりやすくするだけではなく、データの読み解き方を端的にまとめてコメントで回答する、という流れだ。

■企業に送るリポートのサンプル
企業に送るリポートのサンプル。レーダーチャートの基準(0)は商品によって異なり、既存品との商品差を表すこともあれば、単純な物質量を表すこともある(写真/キューサイ分析研究所提供)
レーダーチャートの基準(0)は商品によって異なり、既存品との商品差を表すこともあれば、単純な物質量を表すこともある(写真/キューサイ分析研究所提供)

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