ケーキ専門ECモール「Cake.jp」が躍進している。2021年の年間流通総額は、20年から1.6倍となった。Cake.jpの急成長を支えるカギは、データ活用にある。購買データやモール内の検索データを基に、スイーツの人気傾向を把握。それらをCake.jpの加盟店にも提供し商品開発に生かしてもらうなど、自社に閉じないデータ活用で売れる商品を続々と開発する。Cake.jpでの売り上げが、実店舗を上回る加盟店も多数あるという。特許出願中の独自技術を活用した新たな戦略で、さらなる成長を狙う。
2009年4月に創業したCake.jp(東京・新宿)は、冷凍ケーキ専門のECモールを運営する。自社のオリジナルスイーツだけでなく、全国の洋菓子店から出店を募り、他社のスイーツ販売も手掛ける。「ケーキ版Amazon」とも呼べるプラットフォームだ。このCake.jpの出店(加盟店)数が、新型コロナウイルス禍を受け急拡大している。なお売り上げ構成比は、自社オリジナル商品が2割、加盟店の商品が8割となっている。
以前の加盟店数は200店舗程度だったが、新型コロナ感染拡大に伴う店舗の休業要請などを受け、Cake.jpへの出店を希望する店舗が急増。加盟店数は21年12月時点で1500店舗となり、22年6月現在、新規募集を一時的に停止するほどの急成長を遂げている。ECモール上では5000種類以上の商品を販売。取扱商品の拡大に合わせて会員数も増え、100万人(21年12月時点)を突破した。
購買データを基にスイーツの人気傾向を把握
流通総額、加盟店の出店数ともに急成長を遂げているCake.jp、その躍進の理由はデータにある。移り変わりの激しいスイーツのトレンドを、モールの利用データでいち早く捉えたうえで、自社だけでなく一部の加盟店にも提供し、商品開発を支援している。
例えば、ブリオッシュなどのパンに生クリームを挟んだイタリア発祥の洋菓子「マリトッツォ」は20年から21年にかけて一大ブームを巻き起こしたが、日経クロストレンドでも紹介した通り、21年下期にはブーム衰退の傾向にあった。
▼関連記事 ブーム後退マリトッツォ、人気底堅いピスタチオとの違いが判明Cake.jpの高橋優貴代表によるとこうしたブームの移り変わりは、マリトッツォのように大きなものから、「韓国風のデザインがはやっている」といった細かなものまで、さまざまあるという。そうしたトレンドを押さえながら商品を開発することが、ヒット商品を生み出すことにつながる。
そこでCake.jpでは、会員数100万人というユーザー基盤を活用し、購買データやモール内で検索されたキーワードなどから、顧客が望むスイーツのトレンドを把握。それらを一部の加盟店にフィードバックし、ニーズをいち早く捉えた商品開発に役立ててもらっているという。
例えば、加盟店の1つ、「パティスリーラヴィアンレーヴ」には、韓国発の「センイルケーキ」が流行しているというデータを基に商品化を提案。21年7月に発売したところ、ヒット商品となった。その他にも、「写真ケーキ」などCake.jpの売れ筋商品をラインアップに追加してもらったところ、21年7月の単月売り上げが前月比30%増になるなど、同店の売り上げアップにもつながっているという。
Cake.jpは自社工場を構え、オリジナル商品の開発も手掛けている。データを基に自社で人気が出そうな商品を考案し、レシピや手法を加盟店に共有し製造・販売してもらうのだ。ここ最近では「ケーキ缶」と呼ばれる、プルタブの蓋がついた缶に入ったケーキがヒットした。アニメ「呪術廻戦」や、映画「シン・ウルトラマン」とコラボしたケーキなども開発し、人気を集めている。こうしたIP(知的財産権)とのコラボ商品の場合は、これらの版権をCake.jpが取得しレシピを作成。そのレシピを基に、一部の加盟店にケーキ缶の製造を依頼している。
ケーキ缶のヒットは、SNSとの相性の良さも重要なポイントだ。スイーツは老若男女問わず人気だが、とりわけ若い世代の間で話題になった商品は全世代へと広まりやすい。そのため、SNSで口コミが広まると一躍人気となる。つまりスイーツ業界で人気になるかは、SNSで話題を呼べるかがポイントとなる。SNSと相性が良い商品には傾向がある、と高橋氏はいう。その1つが、固定概念を崩すことだ。
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