ほぼ日代表、糸井重里氏のロングインタビュー後編。音声配信だけでなく、YouTube番組の配信など、多様なチャネルでの発信を広げるほぼ日。「なぜ今、音声なのか」を糸井氏に直撃した前編に続いて、後編ではほぼ日流の企画術、新しいコンテンツやサービスのつくり方にスポットを当てて聞いていく。
新しいコンテンツは、やってみたい、応援したいから始まる
――ほぼ日では、専用アプリ、オーディオブック、YouTubeなどいろいろなメディアやツールを駆使してファンとつながっています。また、ウェブサイトでコンテンツを発信するだけでなく、「ほぼ日手帳」などの物販があり、「ほぼ日の學校」などの教育コンテンツもあり、ほぼ日の活動は多岐にわたっています。失礼な言い方になるかもしれませんが、多様な半面、軸がどこにあるのか外からは見えにくいと感じます。コアになっているものは何でしょうか。
糸井重里氏(以下、糸井) 軸にあるのは、「やさしく、つよく、おもしろく。」という行動指針です。何が起こってもその態度を大事にしています。苦しいときも「おもしろく」は諦めたらだめだと思うし、「つよく」が本当に必要とされているときにも、その前提に「やさしく」がなくてはいけないと思います。
例えば、もともと物販は考えてもいなかったけれど、物販がやりたくてほぼ日にいる人もいて、店でものを売ることが好きという人もいて、つくって考えるのが好きという人もいる。どこからどんな新しいコンテンツがもくもくと湧いてくるか、分からないんですよね。
――行動指針をベースに出てきたアイデアに対して、それをどのように会社として受け止めたり、また事業化に進めたりするのでしょうか。アイデアを集めたり、形にしたりする過程で工夫していること、意識していることは。
糸井 僕からは「とにかく若い子はやれよ」ってとりあえず言ってあります。アイデアを常に出し続けることが大事だという認識は、伝わっているのではないかと思いますね。
どんなものでも、まずは初心者が考えそうなシンプルなアイデアから始まるんです。例えば、「文化祭で焼きそばを売ってみたい」みたいに。そうすると先輩が「どんな焼きそばが好きなの」とかって聞いてくれますよね。そこで「おいしい焼きそばです」とかって答えると、先輩が「おいしいって言っても何かがあるじゃん、俺はあれが好き」とか。そういうふうに広げていくことが大切だと思うんです。
言い出した本人が先輩に比べて考えが浅いことに気付き、自信をなくしたりすることもあります。だけど「やってみたい」って思ったときには、もう一歩進んでいるわけ。そして、助言をした人はもう、応援団になっているんです。そんなコミュニケーションが、立ち話や他の仕事の合間とかに起きることがとても大切だと考えています。なので、社内にはたむろしたり、立ち話をしたり、ぶらぶらしたりできる場所がいっぱいあるんです。
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