「ほぼ日刊イトイ新聞」などを展開するほぼ日が、音声コンテンツの拡充を進めている。2022年4月15日からオーディオブック「聞く、ほぼ日。」の配信をスタート。なぜ今、音声なのか。ほぼ日の代表である糸井重里氏に、音を大切にする理由や音声コンテンツの魅力、ほぼ日流の企画術などについて、じっくり話をうかがった。今回は、1時間30分近くにわたったロングインタビューの前編をお届けする。

ほぼ日代表の糸井重里氏にロングインタビュー。音声コンテンツを拡充する狙いや思いに加え、面白いコンテンツをつくる仕組みづくり、ほぼ日が目指すものなどを聞いた
ほぼ日代表の糸井重里氏にロングインタビュー。音声コンテンツを拡充する狙いや思いに加え、面白いコンテンツをつくる仕組みづくり、ほぼ日が目指すものなどを聞いた

自分をつくった原点は、「音」だった

――「ほぼ日刊イトイ新聞」の人気コンテンツを音声化したオーディオブック「聞く、ほぼ日。」がスタートしました。音のコンテンツに注力している理由を教えてください。

糸井重里氏(以下、糸井) 音声にはずっと興味があって、いつでもつかず離れず、大切に考えてきました。

 もう30年くらい前ですが、『KYON2「とかげ」を読む。』というタイトルの朗読CDを出しました。山奥のコテージみたいなところで、吉本ばななさんの小説を小泉今日子さんが読んでバイノーラル録音(編集部注:ステレオ録音の方式の一つ。音声が人の耳にどのように届いて聞こえているのかという点に着目し、それを再現する録音手法)したものです。キョンキョンがあたかも耳元で読んでくれるかのようなCDで、僕が音声を本当に手がけた最初だと思いますね。

2022年4月15日にオーディオブック「聞く、ほぼ日。」の配信をスタート。Apple PodcastやSpotifyで無料コンテンツを配信する他、audiobook.jp(オトバンク)やAudible(Amazon)などで有料コンテンツも配信
2022年4月15日にオーディオブック「聞く、ほぼ日。」の配信をスタート。Apple PodcastやSpotifyで無料コンテンツを配信する他、audiobook.jp(オトバンク)やAudible(Amazon)などで有料コンテンツも配信

――糸井さんが考える、音の良さや魅力とは。

糸井 自分のことなので分析は難しいんですが、小さい頃にカルチャーは基本的に音で入ってきていたんだと思うんです。NHKのラジオドラマあるいは落語、漫才、歌、そういうものは基本的に耳から入ってきたもので、それが自分をつくる原点です。出合いは音で、耳だった、それが出発点なんじゃないかなと思いますね。

――多くのコミュニケーションツールやコンテンツは、音だけでなく、画像や動画などが付加され、基本的に情報量が多いほうへと進んできたように思えます。そんな中、音だけのコンテンツは極めてシンプルで、ある種ちょっと退化したように捉えられるのではないでしょうか。

糸井 音が見直されているというより、音のほうが主(あるじ)だったと思うんです。リッチなコンテンツというのは、音をベースに映像などその他のものが足されているだけだと思いますね。

 人間同士のコミュニケーションのほとんどは会話ですから、人の根っこのほうに近いのは音だと思います。音というか、“聞く言葉”ですよね。音楽なんかもそうですけど。その本来のところをみんながちょっと見直したのかもしれないですね。

――糸井さんの原点は音だったとおっしゃいました。今の若い世代は、小さい頃に音だけのコンテンツにはあまり触れてなかったのではないかなと思います。それでもラジオ人気が再燃していたり、音声プラットフォームのVoicyやオーディオブックを聞いていたり、音に対して理解がある。どうして若い人が反応するのか、すごく疑問に思っています。

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