franky(東京・港)は2022年4月、スーツケース「moln(モルン)」の販売を開始した。プロダクトや店舗のデザインで柴田文江氏や二俣公一氏、岡本健氏、田中信吉氏が参加。社長の赤坂優氏は元IT企業の創業者。なぜ「デザイン経営」に目覚めたのかを聞いた。
franky社長
――molnは、どういう意味ですか。
赤坂優氏(以下、赤坂) スウェーデン語で「雲」の意味です。雲には国境も言語もなく自由に空を漂うため、今回は旅の理想の形としてブランド名にしました。スーツケースのプロダクトデザインは柴田文江さん(デザインスタジオエス代表、東京・目黒)が手がけ、素材には樹脂に加えて合皮レザーも用い、赤土や炭、岩など大自然から発想を得たテラコッタやチャコール、ストーンの3色で展開しています。
一方、外側にノートパソコンを収納できるモデルもあったり、静音性に優れたキャスターも採用したりするなど、旅情や懐かしさを醸し出しながらも現代のライフスタイルに適した機能を備えていると自負しています。
そのほか、クリエイティブパートナーとしてロゴなどを岡本健さん(岡本健デザイン事務所代表、東京・渋谷)が担当し、さらに田中信吉さん(ゼロワンデザイン代表、東京・世田谷)、二俣公一さん(ケース・リアル代表、福岡市)にも参画していただきました。2022年4月の予約販売の開始と同時にmolnの世界観を反映させた「moln 南青山店」をオープンしています。空間デザインを重視し、壁面や床、ディスプレー台に多くの石材を使用するなど、天然素材に囲まれた、ゆったりとしたラウンジのように仕上げています。
自分が欲しい商品がない
――なぜデザインを重視してmolnを立ち上げたのですか。
赤坂 私は08年にIT企業を創業し、国内最大級となった恋愛・婚活マッチングサイト「Pairs」を12年に立ち上げた経験もあります。そのときからデザインの重要性を強く認識していました。当時、こうしたサイトについてネガティブなイメージを持つ人がいたからです。それを払拭し、安心感を与えるUI(ユーザーインターフェース)とは何か、それにはどんなアイコンや色がいいかなど、あまり他社がやらないようなUX(ユーザーエクスペリエンス)デザインを当時、推進しました。社内にデザイナーも抱えるなど、そこまでデザインに気を配っていたIT企業は、あの頃はまだ少なかったのではないでしょうか。
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