クラウドファンディングの「Makuake(マクアケ)」が2022年4月から本格展開を始めたのが、プロジェクト実行者と小売店などのバイヤーをつなぐサービス「Makuake応援仕入れ」だ。既に大手百貨店など100社以上のバイヤーが登録、22年末までに1000社を目指す。新規性の高い商品を他社に先駆けて扱えるサービスで、新たな商流が生まれようとしている。
マクアケが本格展開を始めた「Makuake応援仕入れ」は小売店やEC事業者のバイヤーが登録し、マクアケで開催中のプロジェクト実行者(企業や個人)から専用サイトを通じて卸値で少量から直接仕入れられる新サービスだ。バイヤーは通常の応援購入ページに掲載されているのと同様のプロジェクト実行者の思いや商品の詳細なアピールポイントを確認しつつ、マクアケの一般サポーターによる応援購入の集まり具合、応援コメント、いいね数などを参考に仕入れるかどうかを判断できる。プロジェクト実行者と直接メッセージのやり取りも可能だ。
「マクアケの各プロジェクトページは、実行者が何にこだわり、どんな技術を用いて、どのような製造工程を経ているかなど作り手の顔が見え、サポーターの声も拾える。通常のリアルの商談で得られる情報と同等か、それ以上のものがオンラインで獲得できる。何よりも、(プロジェクト実施中で)まだ世の中に流通していない商品をいち早く仕入れ予約できるのがメリット」と、マクアケ共同創業者の坊垣佳奈氏は説明する。
一方、プロジェクト実行者にとっても、作成したプロジェクトページをそのまま生かしてバイヤーにもアピールできる利点は大きい。新型コロナウイルス禍でリアルの展示商談会が縮小されてきた中で、オンラインで比較的簡易に仕入れてもらえる機会が持てるうえ、多くのバイヤーに対して一度に丁寧な情報提供ができる。何より、多くは商品生産前の段階であるプロジェクト実行中に取り引き先を確保できるのはメリットだ。
また、プロジェクト実行者は、登録バイヤーから仕入れ申請があった場合、そのバイヤーが所属する店舗やECサイトを見てから卸すかどうかを判断できる。取り引きの公平性は担保されており、買い取り仕入れのため余分な在庫を抱えるリスクもない。なお、プロジェクト実行者がマクアケに支払う応援仕入れの手数料は一般サポーターによる応援購入と同じで、総仕入れ価格の20%(決済手数料5%、プラットフォーム手数料15%)となっている。仕入れ側の小売店は手数料が無料だ。
実際の商品の納品タイミングは、応援購入した一般サポーターに商品が届けられた後になる。だが、この時点ではプロジェクト実行者は一般販売を開始しておらず、応援仕入れを利用したバイヤーは他の小売りに先駆けて店頭に並べることが可能。マクアケで実施されるプロジェクトの商品は、斬新なアイデアを形にしたものが多く、ユニークな商品をいち早く扱うことで差別化ができるというわけだ。プロジェクト実行者からの納期の遅延リスクは応援購入と同様にあるが、「現状でもマクアケでの遅延発生率は0.1%以下に抑えられている」と、坊垣氏は話す。
伊勢丹や大丸、そごう・西武のバイヤーも登録
応援仕入れサービスは、2021年7月に構想を発表後、現在までにバイヤー登録数は100社以上に達している。その中には、伊勢丹新宿本店や大丸神戸店、そごう・西武、ジャーナルスタンダードファニチャーといった大手百貨店やセレクトショップも含まれるが、7割以上はEC専業も含めた全国の中小ショップだ。例えば、文房具やインテリア雑貨などを扱うHIGHTIDE(ハイタイド)やライフスタイルセレクトショップのWHOLE(ホール)などが代表例で、「しっかりとしたこだわりのある店ばかり」と坊垣氏は話す。
基本的に登録バイヤーはマクアケ側からの招待制だが、希望があった場合は選定基準に合致すれば登録できる。マクアケは22年末までに1000社まで登録バイヤー社数を増やす考えだ。
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