東京中央美容外科(TCB)が放映した、医療脱毛のプランを宣伝するCMが話題を呼んだ。あえて美容のイメージから離れたフワちゃんを起用し、女優さながらにドレスアップ。普段の姿とのギャップで視聴者を驚かせ、同社の医療脱毛を訴求した。記憶に残ることを意識し、CMの構成にこだわった。
モデルや女優を避けた理由とは
「もうすぐ医療脱毛の新CMに登場する、TCBの新ミューズ(公式キャラクター)は誰?」――。東京中央美容外科(以下TCB)は2022年4月22日、公式Twitterで上記のツイートを投稿。CM冒頭のイメージカットとともに、新CMの出演者が誰かを投げかけ、正解者の中から抽選でAmazonギフト券が当たるキャンペーンを行った。
透き通った肌に、深紅のルージュ、カラコンでバチっと決めた瞳、豪華なシルバーのイヤリング……。イメージカットの女性は、美容外科のCMにふさわしいエレガントな印象だ。ツイートのリプライ欄には、「(女優の)井川遥」と回答するユーザーも散見された。
しかしこの女性は、お笑いタレントでYouTuberのフワちゃんなのだ。普段テレビで見るフワちゃんは、カラフルな衣装でおちゃらけたキャラクターのイメージ。このCMシリーズの「その正体は」編ではそれが一変する。黒のモノトーンでシックな衣装に身を包み、陰影のあるメイクで顔の輪郭がシャープになり、妖艶さが際立っている。普段の彼女からは想像できない姿に、CM放映後は「きれい」「美人すぎ」「誰か分からなかった」「女優かと思った」といった称賛のコメントが、公式Twitter上に多く寄せられた。
なぜ、TCBは美容のイメージから離れたイメージのフワちゃんを起用したのか。
「フワちゃんはもともとポテンシャルが高い。CM内でより魅力的になった姿を披露することで、女性が美しく変身できることを伝えたかった。とにかくインパクトを残したかったので、普段の人物像とのギャップを感じてもらえるよう意識した」
そうCMの狙いを語るのは、TCBのテレビCMを担当するメディカルフロンティア(東京・港)経営企画室の石川将之氏だ。確かに女優やモデルなどを起用すれば美容のイメージは伝えやすいだろう。しかし、一般ユーザーからすれば“お高い”イメージを持たれてしまう可能性もある。
そこでポップなイメージのフワちゃんを、女優のような雰囲気に仕立てた。あえて美容のイメージから遠いフワちゃんの登場により、視聴者に親近感を刷り込みつつ、さらに艶やかな演出で医療脱毛の効果の高さを訴求した。
「フワちゃん本人もドレスアップすることで、気分が乗った状態で撮影に臨んでくれた。フワちゃんを通じて、視聴者にも美しくなる楽しさや気分が明るくなる前向きさを感じてもらい、医療脱毛を受けたら豊かな人生が送れるというメッセージを伝えたい」と石川氏。
フワちゃん起用に全会一致
フワちゃんのギャップを最大限に引き出すため、CMの構成も綿密に練られた。「その正体は」編の15秒版では、冒頭から徐々にフワちゃんの存在を匂わせつつ、最後の最後で盛大にネタをばらす流れとなっている。
まず冒頭ではハットを被ったシルエット姿のフワちゃんが登場する。この時点では出演者が誰かは把握できない。そこから目元、唇、フェースライン、顔全体と、徐々にパーツ単体から広範囲へシーンが移っていく。続いて肩、ふくらはぎ、腕と、カメラは身体の部位に移る。このシーンでは、露出度の高い衣装からあらわになったきめ細かい素肌を見せることで、医療脱毛のイメージを押し出している。
顔や身体の部位ごとの場面が一通り流れると、次はバストアップ姿にTCBのロゴが重なるカットが挿入され、その後カチンコが打たれる。ここからが極め付きの“ネタばらし”の時間だ。カチンコが下ろされ撮影が終わったことが示唆された瞬間、「フワちゃんでした!」とおなじみの変顔を披露し、視聴者の度肝を抜く展開となっている。
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