富士フイルムは2022年3月、光の反射によって生じる発色現象を活用したインクジェット技術を発表。自社のプリンターと組み合わせ、デザインやアートの新しい表現につながるようにした。「構造色インクジェット技術」と呼び、シチズン時計が発売する腕時計の文字板や、アーティストの舘鼻則孝氏が制作するアート作品に採用された。

「構造色インクジェット技術」で印刷した図柄は、背景の色によって見え方が大きく異なる。左は背景を黒にしたもので、右は背景を白にしたもの(写真/丸毛 透)
「構造色インクジェット技術」で印刷した図柄は、背景の色によって見え方が大きく異なる。左は背景を黒にしたもので、右は背景を白にしたもの(写真/丸毛 透)

 構造色とは、光の波長程度の微細構造によって生じる発色現象。物質自体に色素が無くても、微細構造によって光が干渉、分光することで色が付いたように見える。例えば自然界で、一部の貝殻や昆虫の羽などが虹のように見えるのも同じ原理に基づく。いずれも単に色を塗り重ねただけでは表現できない、鮮やかな印象がある。インクジェット以外の技術で構造色を再現して商品に採用される例はあったが、インクジェット技術では今回が初めてという。

赤や緑、青に応じた3インクを活用

 構造色による発色の原理には、薄膜構造や多層膜構造、回折格子、散乱などがある。同社は技術内容を非公開としているが、いずれかの原理を応用し、特殊素材を含んだインクを吹き付けて、UV(紫外線)による特別なプロセスで定着させたようだ。通常のインクジェットプリンターはシアンやマゼンタ、イエローなどのインクを用いるが、今回のインクには色素となる染料や顔料を含まず、どれも透明に見える。同社は光の3原色を意味するR、G、B(レッド、グリーン、ブルー)で各インクを呼んでおり、吹き付けられるとナノメートル(ナノは10億分の1)単位の微細構造をインク内部に瞬時に形成し、赤や緑、青に応じた光の反射や透過を制御することで発色する。3つのインクを重ね刷りすることでオレンジや黄、水色といった中間色も可能になり、フルカラーに近い色合いも表現できるという。

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