一時のブームからは沈静化したといわれるオウンドメディア。だが、そんな中、2020年に立ち上げて僅か1年で月間400万PVにまで急成長した驚きのサイトがある。ホームセンター大手のカインズ(埼玉県本庄市)が展開する「となりのカインズさん」だ。なぜ多くの人に愛されるのか、勝算をいかに見出したのか、キーパーソンに直撃した。

カインズのオウンドメディア「となりのカインズさん」。マニアックで熱量の高い、思いっきりのよい企画が並ぶ。人気オウンドメディアの勝ち筋に迫る
カインズのオウンドメディア「となりのカインズさん」。マニアックで熱量の高い、思い切りの良い企画が並ぶ。人気オウンドメディアの勝ち筋に迫る

 2020年の開設から僅か1年間で月間400万PVを突破し、今なお成長を遂げるオウンドメディアがある。関東を中心に全国200店舗以上のホームセンターを展開するカインズの「となりのカインズさん」だ。

 オウンドメディアは2010年代中盤にかけて参入企業が相次いでブームともいえる状況になったが、思うようなパフォーマンスが得られないなどの理由で撤退が続出。“オワコン”といった声も聞かれる。そんな中、あえて参入し、そして躍進を続ける「となりのカインズさん」。創刊編集長で、カインズのデジタル戦略本部メディア統括部長の清水俊隆氏に直撃し、なぜ今オウンドメディアに力を入れるのか、そしてなぜ多くの人に愛されるのか、探った。

となりのカインズさんは、2020年6月にスタート
となりのカインズさんは、2020年6月にスタート
「となりのカインズさん」創刊編集長の清水俊隆氏
「となりのカインズさん」創刊編集長の清水俊隆氏

認知度向上だけではない 社内のデジタル変革こそ本丸

 「となりのカインズさん」が立ち上がったのは20年6月のことだ。当時、カインズでは「現在を第3の創業期と捉え、IT小売りになる」という方針を掲げ、人材採用も含めたデジタル戦略を打ち出していた。その一環として、自社でメディアをつくって発信する場を設けることとなったという。そんな中、編集長として白羽の矢が立ったのが、前職でオウンドメディアに携わった経験があった清水氏だった。

 それまで同社は自社で発信する場をほとんど用意しておらず、SNSでも話題になることが少なかった。そこでオウンドメディアを通じてポジティブな発信を増やし、人々を巻き込んでいこうと考えたのだ。「カインズの各店舗には10万種類ほど商品があり、中には30年以上働いて商品知識を蓄えてきた店員もいる。その知識やノウハウを発信するにも、店舗で1対1の接客をするだけでは限界がある。デジタルを使って発信することで、もっと多くのお客様に面白さを伝えられると考えた」(清水氏)。

 だが実は、真の狙いはもう1つあった。

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