オリジナルドラマをつくる斬新なECサイトがある。クラシコム(東京都国立市)が運営する「北欧、暮らしの道具店」だ。以前の記事で、開封率40%超という驚異のメルマガについて取り上げた。だが、実はYouTube戦略も極めて特徴的だ。ドラマやドキュメンタリーなど多様なコンテンツをつくる理由、動画に力を入れる思い、そして動画づくりで意識していることを聞き、YouTube戦略の背景に迫った。
「新ドラマできました」
こんな発表をしたのはテレビ局ではない。クラシコム(東京都国立市)が展開するECサイト「北欧、暮らしの道具店」の話だ。
2022年4月28日と29日にオリジナルドラマ「庭には二羽」の前後編を2夜連続で公開。YouTubeでのリアルタイム上映には多くのファンが“駆け付けた”。今作は同店の4作目となるオリジナルドラマで、俳優の美村里江(「ミムラ」から改名)さんや森本華さんが出演。さらに、主題歌をシンガーソングライターの大比良瑞希さんが書き下ろすなど、その力の入れようが見て取れる。
「北欧、暮らしの道具店」は、07年にオープンした雑貨や衣類を中心に扱うECサイト。22年2月の記事(以下の関連記事)でも紹介したように、メルマガや各種SNSをはじめ、YouTubeなど多様なチャネルで消費者とつながっているのが特徴だ。
▼関連記事 驚異の開封率40%超 「北欧、暮らしの道具店」メルマガの流儀中核となるECサイトは200万MAU(月間アクティブユーザー数)、19年に配信をスタートした公式アプリも既に150万ダウンロードを突破。さらに、LINEは64万フォロワー、Instagramは120万フォロワーの規模を有する(全て22年1月時点の数字)。
面白いのは、テキストベースのメルマガやSNSだけでなく、音声や動画メディアまでも積極的に活用している点だ。Spotifyといった音声メディアではスタッフのトーク番組やエッセーを朗読するコンテンツを配信。YouTubeでは生活風景や前述のようなオリジナルドラマなどを投稿し、22年4月末時点でチャンネル登録者は51万人を突破している。数百万再生といった爆発的にバズった動画はないが、コンスタントに数万再生を記録し、数十万~100万再生を突破している動画も目立つ。オリジナルドラマも数万~百数十万再生を記録するなど、人気コンテンツとなっているのだ。
なぜECショップがドラマづくりに力を入れるのか
事業会社やECショップ、メーカーなどが、YouTubeに商品の紹介動画を載せたり、ウェブCMを保存したりといった事例は少なくないだろう。ではなぜ、“畑違い”ともいえるドラマにチャレンジすることになったのか。
「ドラマをつくることになったのは、正直偶然です」。そう語るのは、クラシコムの取締役で「北欧、暮らしの道具店」店長の佐藤友子氏だ。
同店がドラマの制作に至ったのは、17年のある出来事がきっかけになっている。当時はもともとYouTubeのチャンネルは立ち上げており、商品動画などをアップしていた。
そんな中、10周年となる17年にファンへの感謝の気持ちを伝える企画を検討。そこで思いついたのが、ウェブCMの制作だった。ただ、それを協力を依頼するべく映像制作会社にプレゼンしたところ、「『感謝を表現するには弱い』とダメ出しを受けた」と佐藤氏は笑う。
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