米ツイッターは米国時間2022年4月25日に、米起業家イーロン・マスク氏による買収提案を受け入れたと発表した。マスク氏が買収資金を確保したと公表し、当初は防衛策を取っていたツイッターも抵抗を断念せざるを得なかった。今後どんな変化が起きるのか、マーケターとして備えていくべき事は何か。尾原和啓氏、徳力基彦氏、西口一希氏、川添隆氏の4人に聞いた。
ツイッターの発表によると、マスク氏の提案通りに1株あたり54.20ドルで買収を受け入れる。買収額はマスク氏が持っている9.2%の株を含めて約440億ドル(約5兆6000億円)に達する。買収の完了後、ツイッターは非公開企業になる。ツイッターCEO(最高経営責任者)のパラグ・アグラワル氏は「ツイッターには全世界に大きな影響を与え続けるという目的がある。社員を深く誇りに思っており、かつてないほど重要な仕事に刺激を受けている」とツイートした。
イーロン・マスク氏も発表文の中でコメントを記入している。「言論の自由は、民主主義の基盤であり、Twitterは人類の未来に不可欠となるさまざまな問題が議論されるデジタルの広場のようなものだ」と22年4月14日に言論イベント「TED」に登場した際の主張を繰り返した。さらに「新機能で製品を強化する」「アルゴリズムをオープンソースにして信頼度を高める」「スパムボットをなくす」「(アカウントの利用停止をせずに)すべての人を承認する」といった取り組みによってTwitterを改善していくとした。
▼関連記事 イーロン・マスク氏はなぜツイッター買収? 5つの疑問に答えるTwitterというコミュニケーション空間内での言論の自由を守るため、マスク氏はTwitterのアルゴリズムをオープン化すると主張する。「デマやフェイクと思われるツイートには警告を表示する」「暴力行為を扇動する危険性がある場合はアカウントを停止する」といった判断基準をブラックボックス化するのではなく、疑問があれば修正の意見を誰でも訴えることできるようにして、改善につなげるという。
マスク氏は現状の基準が厳しすぎると考えている節があるようだ。「あなたが言われて欲しくないことを、あなたの嫌いな人が言うことができるなら、言論の自由が保たれていると言える」とTEDの講演で発言している。「言論の自由の意味は、私に対する最も強い批判がTwitterに残り続けるということ」ともツイートしている。
こうした考えに基づくと、フェイクニュースやヘイトスピーチの増加につながる恐れもある。EU(欧州連合)は利用者保護を目的とした「DSA(デジタルサービス法案)」に合意した。規模の大きなITプラットフォームに対し、違法コンテンツの排除を義務付け、性的指向や宗教などに関するターゲティング広告を禁止するというものだ。こうした消費者の保護を拡大しようという流れと逆行するとも考えられる。もちろん、どこまでが違法で、どこまでグレーゾーンを許容できるかは深い議論が必要となる。
▼関連記事 EUの「デジタルサービス法案」 一部ターゲティング広告を禁じるTwitterで動くスパムボットをなくすという主張は、ユーザー保護の観点に沿った改善に見える。ただマスク氏はその先に踏み込み、一時期「広告へに依存する企業は独善的になりやすい」という理由で、Twitter上の広告をなしにしたいと主張していたこともあった。他のネット企業と同様に、Twitterの収益の大半は広告費であり、転換は困難と見られるが、この部分でもマスク氏が豪腕を振るわないとは限らない。「よもや」が現実になれば、デジタルマーケティング業界に大きな影響を与えそうだ。
この記事は会員限定(無料)です。