トヨタ自動車が新型バッテリー電気自動車(EV)、「bZ4X(ビーズィーフォーエックス)」を2022年5月12日に発売する。30年にバッテリーEVのグローバル販売台数で年間350万台を目指すトヨタにとって、本気のEV戦略が始まる。個人向けはサブスクリプション(定額課金)サービス「KINTO」専売とするなど、EVビジネスの難しさもうかがわせる。だが、日本ならではの生きる道もある。自動車ジャーナリストの小沢コージ氏が分析する。
初のバッテリーEVは慎重な台数設定
トヨタが造る初のバッテリー電気自動車(EV)の専用車、新型「bZ4X」の具体的な価格や販売体制が明らかになった。今までのトヨタのEVと違い、「e-TNGA」なるバッテリーEV専用プラットフォームで造られている。
当初「2022年央販売予定」とされていた発売時期は、2022年5月12日に前倒しされ、価格は600万円スタート。法人向けはリース販売、個人向けはトヨタ自慢のサブスプリクション(定額課金)サービスのKINTO専売になることも発表された ▼関連記事:なぜトヨタは新型EVをサブスクで売るのか 鍵を握るZ世代の開拓 。
ここからEVビジネスの難しさとトヨタのEVに対する根本的なスタンスが見て取れる。
覚えている人も多いと思うが、21年末、トヨタは「バッテリーEV戦略に関する説明会」を開いた。豊田章男社長自ら「私たちは30年にバッテリーEVのグローバル販売台数で年間350万台を目指します。レクサスは30年までにすべてのカテゴリーでバッテリーEVのフルラインアップを実現し、欧州、北米、中国でバッテリーEV100%、グローバルで100万台の販売を目指します」と断言したのだ。
それまでのEV普及目標は燃料電池車(FCV)と合わせて30年までに200万台だったから、約8割増という大幅なスピードアップだ。それだけに、トヨタの“本気EV第1弾”ともいえるbZ4Xに期待していた人も多かったはずだ。
かくいう小沢も、国内だけで年間数万台レベルの販売目標を掲げると思っていた。価格帯こそ違うが、あの日産自動車の「リーフ」も一時は国内年間5万台前後を売り切っていたのだ。
しかし初年度の目標生産・販売台数は年間5000台と、ぶっちゃけ昨年度、国内乗用車販売ランキングで50位だったレクサス「UX250X」の年間8200台よりも少なく、消極的な目標といわざるを得ない。しかし、その理由も価格を見ればよく分かる。FFモデルで600万円、4WDモデルで650万円。22年度(令和3年度)中は、国からのCEV(クリーンエネルギー自動車)導入促進補助金で満額の85万円を受け取れるが、それでも500万円は軽く超えてしまうだろう。
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