米国ラスベガスで2022年3月末に開催された小売業界のイベント「SHOPTALK」で、注目トピックの1つはインフルエンサーによる「ライブコマース」だった。中国では数年前から成果を出せる販路として注目されてきたが、最近では米国でも盛り上がっている。ライブコマース成功の秘訣を講演内容から探る。
小売りや流通の未来が語られる2022年のSHOPTALKの中で、メタバースと並び「新しい販売チャネル」として注目が集まっていたのはライブストリーミングだ。ライブストリーミングは、主にインターネットを利用したライブ配信のこと。ブランドのストーリーを効果的に伝えることができ、消費者と深くつながり、ロイヤルティーを高めるなど、活用方法が進化している。中国だけでなく、米国でもライブストリーミングを活用した販売、いわゆる「ライブコマース」の販売額が急増しているという。
▼関連記事 小売りの祭典「SHOPTALK2022」レポート 語られた11の重要ポイント注目度が高かったこともあり、今年のライブストリーミングに関するセッションは豪華だった。中国アリババグループのネット通販サイト「天猫(Tmall)」のグローバル担当者、中国で急成長してメジャーなライブコマースになった米ショップショップスの最高経営責任者(CEO)のほか、動画サイトのYouTube、化粧品の米エスティ・ローダー、米有力ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツなどの担当者が登壇。ライブストリーミング市場の消費者や技術の変化について、自社の立場から説明した。
ライブコマースの成長の軌跡、中国の急成長
まずは最大の市場である中国におけるライブコマースの現状を押さえておこう。中国でライブコマースは17年ころから立ち上がり始め、急速に成長する。21年には中国のEC売り上げの約15%に達し2兆元(約36兆円、21年末の1元=18円とした場合)の市場になったといわれている。
米国のライブコマース市場も伸びている。ドイツの調査会社のスタティスタによると、20年の60億ドルから21年には110億ドル(約1兆3000億円、21年末の1ドル=115円の場合)へと成長した。24年には350億ドルに達すると予測している。
米ウォルマートも20年まではクリスマス商戦前に年数回トライアル的なプログラムをしている程度だったが、21年には回数を増やしており、人気のインフルエンサーやセレブも投入して、本格的にライブコマースに参入した。
米小売り最大手のウォルマートをベンチマークとして、他の流通各社が追いかける可能性は高い。その兆候は、SHOPTALKを総まとめするセッションの中で見ることができた。「今後1年で、ライブストリーミングのショッピング(ライブコマースを含む)を実行する必要性があるか」というアンケートで「強くそう思う」を選んだ参加者は27%、「ややそう思う」が42%だった。約7割が必要性を感じていることになる。
Z世代やミレニアル世代を狙う
SHOPTALKのいくつかのセッションを通して、今なぜ米国企業がライブコマースへの参入に積極的なのかという理由が見えてきた。
まず「テレビショッピングの層より若い消費者とつながることができる」ことが大きい。米国でのライブコマースの利用者は、ミレニアル世代(1980~95年生まれ、現在26~41歳)がメインであり、次に大きな層はZ世代とみられている。
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