自分好みにパーソナライズされた食べきりサイズのおやつが毎月届く“おやつサブスク”、「snaq.me(スナックミー)」の初の直営店が2022年4月23日、東京・清澄白河にオープンする。EC専業から「売らない店」への出店が相次ぐ中で、あえて直営店の展開を選んだ背景には、食べ物という商品特性ならではのデジタルマーケティングの限界があった。
snaq.me(以下、スナックミー)のサービス展開をするスナックミー(東京・中央)の服部慎太郎社長は、直営店オープンの目的を「デジタルマーケティングだけではリーチできない層への認知向上や、ECだけでは満たせない既存客への価値提供」と語る。
スナックミーは、おやつ8個入りの1BOX当たり1880円(税込み、送料別)のサブスクリプションサービス。Webサイトの「おやつ診断」で好みを登録したら、それに合わせた8つのおやつの詰め合わせが毎月ポストに届く仕組みだ。フィードバックを重ねるたびに、より好みの「おやつBOX」になっていく。
おやつは全国50社以上の生産者・加工業者と提携し、すべて自社で開発する。人工添加物、ショートニング、白砂糖を一切使わなかったり、苦手な材料やアレルゲンを避けられたり、フードロス解消のためのアップセルの取り組みを導入していたりと、ユーザーの健康や環境に配慮した内容にも共感が集まり、サービス開始後からファンが増え続けている。
一方で、スナックミーは顧客の裾野の広がりに課題感を抱えていた。スナックミーの中心的な顧客層は30代の女性ネットユーザーだ。主にSNSを通じたデジタルマーケティングで顧客を獲得してきた。
しかし、インターネットやECと親和性の低い中高年層には、SNSやデジタル中心のマーケティングでは訴求できない。実際、テレビで紹介されたとたん、中高年層からの申し込みがにわかに増えたこともあったという。
加えて、「そもそも、もの系のサブスクはハードルが高い」と服部氏は分析する。ITサービス系サブスクや音楽サブスクと違い、「実際に手に取って使うものは買う前に試したい」と考える人は、ネットとの親和性や年齢にかかわらず多い。それが口に入れるものならばなおさらだろう。服部氏は、「デジタルマーケの限界を感じ、デジタル1本でやっていくのは難しいと考えた」と語る。
そこで、直接手にとって試すことができるリアル店舗での展開に乗り出した。2021年には銀座ロフトや、そごう・西武が手掛ける「CHOOSE BASE SHIBUYA(チューズベースシブヤ)」でポップアップや常設コーナーとして商品を置いた。
▼参考記事 b8ta、蔦屋、大丸…6つの「売らない店」検証 どこなら成果出る?すると、サブスクサービスを知らない人が偶然見かけて買っていく。そこで興味を持った人がサブスクに登録することもあったという。リアル店舗戦略に手応えを得た服部氏は、「マーケティング費用はリアルもデジタルも変わらないが、B2C領域ではリアル店舗のほうが顧客獲得コストは低い」と分析する。
さらに、リアル店舗では既存顧客の「好きなおやつを好きなだけ買いたい」という需要にも応えられた。おやつBOXは郵便サイズが決まっているため、大量買いはできないからだ。
このようにポップアップや常設コーナーで一定の成果は出ている。にもかかわらず、不動産や人的コストが大きく、派手な集客の期待が難しい「お菓子屋さん」をわざわざ直営でオープンする理由は何なのだろうか。
4200万件のデータ活用で失敗しない店舗づくりが可能
直営店オープンのきっかけは、新型コロナウイルス禍前まで年に2回、清澄白河で開催していたリアルイベントだった。「毎回100人以上が集まってくれた。実際に食べてもらい、直接顔を見ながらフィードバックをもらえるリアルなタッチポイントの価値を今になって改めて実感している」と、服部氏は言う。
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