2000年代初頭から長く静かに続いてきた「焼き芋」ブームが、コロナ禍にさらにヒートアップ。焼き芋専門店が増え、ブームは海外にまで飛び火している。なぜこれほど焼き芋が受けているのか。その背景を探った。

 焼き芋専門店のニューオープンや多店舗展開は、都内だけではなく全国に広がっている。05年に創業した「芋やす」(茨城県土浦市)は21年5月に2号店となる浅草店をオープン。東京都豊島区に本店を置く「芋王」は都内に2店舗を展開しているが、20年から22年にかけては全国十数カ所で期間限定店を展開。大阪・中崎町にある「蜜香屋」は新ブランド「蜜香屋SUNAJI(スナジ)」を22年2月、JR新大阪駅のエキナカ商業施設「エキマルシェ新大阪」にオープンするなど、小さな焼き芋専門店がブレイクしている例も少なくない。

 さらに、最近の焼き芋ブームの過熱ぶりを象徴しているのが、22年2月23日から5日間にわたって開催された「さつまいも博2022」。新型コロナウイルス感染症の感染拡大直前に開催された20年の第1回は、4日間で約5万人が訪れた。21年はコロナ禍で開催が見送られ、22年は入場制限などの対策を実施しながら開催されたが、それでも5日間で約3万人の入場者を集めたという。

22年2月23日から5日間にわたって開催された「さつまいも博2022」。5日間で約3万人の入場者を集めた
22年2月23日から5日間にわたって開催された「さつまいも博2022」。5日間で約3万人の入場者を集めた

 同イベントの目玉は、出店する全国の人気焼き芋店から来場者の投票で選ばれる「全国やきいもグランプリ」。20年の第1回には出店した18店の中から「神戸芋屋 志のもと」(神戸市、旧名「芋屋HUG」)がグランプリに選ばれた。受賞当時は地元でのみ知られていた焼き芋店だったが、グランプリ選出後には取材やビジネスのオファーが殺到。EC販売やフランチャイズ事業も始め、現在は全国50店舗を目指して展開している。

「全国やきいもグランプリ」のトロフィーを手にする「神戸芋屋 志のもと」代表の野元篤志氏
「全国やきいもグランプリ」のトロフィーを手にする「神戸芋屋 志のもと」代表の野元篤志氏

 20年グランプリ受賞の焼き芋「長期熟成シルクスイート」は、ねっとりした食感が特色。産地指定の焼き芋店は珍しくないが、野元氏は「あぜ道1つ越えただけで、芋の味が全く変わってしまう」と、ワイン醸造家のごとく畑まで指定して選び抜いているという。

 また、22年のグランプリに選ばれた「農家の台所」には期間中、常に長い行列ができていた。同店では今回のイベントのために約1万本の焼き芋を仕込んだそうだ。

「神戸芋屋 志のもと」の「長期熟成シルクスイート」は、収穫後の芋を40日から半年ほど専用の保管庫で熟成させることで糖度をぎりぎりまで高め、それを低温でじっくり焼き上げることで甘みを最大に引き出しているという
「神戸芋屋 志のもと」の「長期熟成シルクスイート」は、収穫後の芋を40日から半年ほど専用の保管庫で熟成させることで糖度をぎりぎりまで高め、それを低温でじっくり焼き上げることで甘みを最大に引き出しているという
22年の全国やきいもグランプリに選ばれた「農家の台所」には期間中、常に長い行列ができていた。同店では今回のイベントのために約1万本の焼き芋を仕込んだという
22年の全国やきいもグランプリに選ばれた「農家の台所」には期間中、常に長い行列ができていた。同店では今回のイベントのために約1万本の焼き芋を仕込んだという

 同イベントにはサツマイモ農家やサツマイモ自体を表彰する賞もある。「サツマイモはあくまでも野菜であり、焼き芋はそのほかのスイーツと比べても生産者に近い。しかし焼き芋ブームと呼ばれる中でも、称賛や恩恵を受ける機会の少ない生産者に胸を張れる場所をつくりたいと思ったのが、イベントを立ち上げるきっかけだった」(さつまいも博実行委員会の石原健司氏)

ブームの源流は「焼き芋オーブン」開発

 安価なおやつとして長年親しまれて来た焼き芋。しかし、従来の石焼き芋は大きさの異なる芋に均一に火を通すため、火力を調整したりこまめに芋をひっくり返したりといった専門技術が必要だった。そのために、店舗数も限られていたという。

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