小売業界のトップリーダーが集結し、最新テクノロジーやビジネスモデルなどあらゆるテーマで議論を繰り広げる「SHOPTALK2022」が米ラスベガスで2022年3月末に開催された。現地を訪れたヤプリのExecutive Specialist 伴大二郎氏が、参加者の関心を集めたメタバースのセッションをリポートする。
2022年3月27日~30日に米ラスベガスで開催された「SHOPTALK2022」。2年ぶりのリアル開催となった同イベントには、275人以上のスピーカーが登壇し、世界各国から約1万人が参加した。リアル開催ならではの熱狂に包まれたイベントの中で、どのような議論が交わされたのか。展示内容とあわせて紹介したい。
会場に「アフターコロナ」感ただよう
マスク着用の義務がなくなった米国では、街中はもちろん、SHOPTALKのイベント会場でもマスクを着けている人はほとんどいなかった。小売業界のトップリーダーの話を聞きながら現地で知り合った人や、同僚と顔をさらしながら面と向かって対話する。数年前なら当たり前だったこうした光景も、新型コロナウイルス禍の日本で暮らしていると新鮮に感じられる。私も食事をしている時など、よく他の参加者から声をかけられた。
そんな「アフターコロナ」感さえただよう会場の中で、どのような小売りに関する議論が交わされたのか。最終日に行われた“Key Takeaways From SHOPTALK 2022(SHOPTALK2022重要ポイント)”では、11個のポイントがまとめられた。
- The Store Is Back( 店舗への回帰)
- Profits are the new sales(売り上げ→利益の追求)
- New channels(新しいチャネル:メタバース/ライブストリーミング)
- Checkout & payments(チェックアウトとペイメント)
- Authenticity(企業の信頼性)
- Sustainability(サステナブル)
- Loyalty(顧客ロイヤルティーの構築)
- Consumer Personalities(消費者のパーソナリティー理解)
- Next Frontier of data=emotional intelligence(エモーショナルデータの活用)
- Cookie-less world : get used to it(クッキーレスへの対応)
- Supply chain challenges(サプライチェーン革新への挑戦)
このセッションの最中、「SHOPTALK 2022で何が一番興味深かったか」アンケートが取られ、即時開示された。最も多くの票を集めたのは、「新しいチャネル(メタバース/ライブストリーミング)」で、やはりメタバースへの関心が高いようだ。
メタバース/ライブストリーミングに続き、「小売りの未来」「顧客データ」がそれぞれ2位、3位となった。ここからは、1位の「メタバース/ライブストリーミング」について、セッションの内容を踏まえて解説していきたい。
新しいチャネル:メタバース/ライブストリーミング
小売業やメーカーが新しいチャネルに参入する上で重要なポイントして挙げられたのが、「コンテンツはコマースである」ということ。メタバース内で魅力的な商品を提供し、店員とコミュニケーションをしながら、消費者が買い物を楽しむ。その体験自体がコンテンツになるということだ。
メタバースやライブストリーミングの活用において企業が意識すべきは「魅力的なコンテンツを提供すること」と「新しいチャネルの登場により消費者の購買体験が変化してきていること」だろう。
現在多くの企業がメタバースにチャレンジしているが、確立された成功パターンは生まれていない。それでも企業がチャレンジするのは、ブランドや商品のストーリーといった独自の世界観を、メタバース空間においてアバターを通じて体験してもらえる期待的効果が大きいからだろう。
米国の若者向けカジュアルアパレル「PacSun(パクサン)」のブリアン・オルソン社長は、セッション「Diving Deeper into the Retail Metaverse Opportunity With PacSun(PacSunとともに小売りメタバースの可能性に挑む)」で、「私たちはオンラインゲーミング・プラットフォームメタバースのRoblox(ロブロックス)がイノベーション、創造性、自己表現を育むプラットフォームだと信じています」と述べ、メタバースの取り組みを紹介した。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー