SDGs(持続可能な開発目標)が企業の重要課題となる中、居酒屋や焼き肉チェーンを運営するワタミは店舗で出る食品残さ(食べ残しなど)を主に鶏の飼料原料へリサイクルする取り組みを進めている。1社単独ではなく、同業の外食チェーンや収集・運搬事業者、リサイクル事業者、養鶏事業者などを巻き込む。食品残さが回り回って卵になって返ってくる「資源ループ」をどのように構築してきたのか。

ワタミが力を入れる「焼肉の和民」
ワタミが力を入れる「焼肉の和民」

 「SDGsには他社との協働が欠かせません」。ワタミの百瀬則子執行役員は言う。本来、同業他社は顧客を奪い合う競争相手だが、ことSDGsに関しては「自社だけでやっていけるものではない」(百瀬氏)からだ。

 2019年4月、名古屋市内でワタミの呼びかけで始めた食品リサイクルループ(以下、資源ループ)は、セブン&アイ・フードシステムズやトリドールホールディングス、松屋フーズ、リンガーハットジャパンといった食品関連4社を巻き込み、38店で生じた食品残さを回収し、家畜飼料に再生してきた。20年4月には類似の資源ループを群馬県内でスーパーのカスミなどを巻き込んでつくった。21年春に新潟県、22年春に京都府でも展開している。

名古屋市で始めた食品リサイクルループの全体像
名古屋市で始めた食品リサイクルループの全体像

 この「協働の輪」は、ワタミにとってメリットがある。自社の食品加工工場がエリア内にあれば、そこで発生した食品残さを処理することもできる。この取り組みは、25年までに福岡県や山口県などに拡張する計画だ。

食品残さの「ループ」はいかに生まれたか

 そもそもワタミの食品加工工場の従業員が、食品残さをリサイクルしても、使い道がはっきりしないと「もったいないじゃないか」と言い出したのが発端という。従来同社では、食品残さを堆肥生産業者に委託処理していたが、自社の食材に直接生まれ変わらせていなかった。これを主に鶏の飼料原料へのリサイクルに切り替え(新潟県では有機野菜の堆肥原料へのリサイクル)、鶏が産んだ卵を自社はもとより参加する食品関連企業に買い取ってもらい、食材として使用することで「ループ」が回るようにした。

食品残さからリサイクルされた鶏の飼料原料(ドライエコフィード)
食品残さからリサイクルされた鶏の飼料原料(ドライエコフィード)

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