テレビCM支援事業のノバセル(東京・品川)は2020年12月から、ADK子会社と共同で成果報酬型テレビCMサービスを提供してきた。だが、大手企業向けには時期尚早な面もあった。そこで販売方針を転換。デジタル広告を活用した成果報酬型サービスに強みを持つADREX(東京・港)と共同で、22年3月から同様のサービスの提供に踏み切った。ADREXが顧客に多く持つネット企業を中心に、成果報酬型テレビCMの活用を推進していく。

ノバセル(東京・品川)は2022年3月2日からADREX(東京・港)と共同で成果報酬型広告サービス「X-MAX」の提供を始めた
ノバセル(東京・品川)は2022年3月2日からADREX(東京・港)と共同で成果報酬型広告サービス「X-MAX」の提供を始めた
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 データに基づき機動的に出稿媒体や広告クリエイティブを変えて最適化することで、成果を高めていく。こうした手法は「運用」と呼ばれ、デジタル広告では一般的だ。管理画面上で自由に広告予算の配分の変更や広告クリエイティブの差し替えがしやすい、デジタル広告ならではの手法だった。こうした発想をテレビCMに取り入れる動きが広がっている。

 デジタル広告の活用が浸透する中、広告主側からは柔軟に広告を出稿できないテレビCMに対する不満が高まっていた。また、若年層を中心に可処分時間が急速にネットに奪われている。日本はテレビメディアの影響がまだまだ強いとはいえ、手をこまぬいていてはデジタル広告に広告主を奪われるばかりだ。

 テレビCMのDX(デジタルトランスフォーメーション)が急務になる中、テレビ局は広告クリエイティブのデジタル入稿や、ネットからの広告出稿の申し込みに対応するなど、少しずつデジタル広告に近い発想でテレビCMの出稿を可能にしてきた。20年3月には、テレビデータ調査会社のビデオリサーチ(東京・千代田)が24年ぶりに視聴率調査を大幅刷新。従来の世帯視聴率に加え、個人視聴率やタイムシフト視聴データの提供を開始。テレビCMを巡るデータの拡充も進んでいる。

 そうした新たな仕組みやデータを使った新しいテレビCMの活用法は、デジタル広告で主流の運用型広告になぞらえる形で「運用型テレビCM」と呼ばれる。大手広告代理店やネット広告代理店などが相次いで支援事業に参入し、徐々に市場が拡大している。その運用型テレビCM支援事業に他業種から参入し、市場をけん引してきた一社がノバセルだ。

 ノバセルは親会社のラクスルのマーケティング策で培った、データを活用したテレビCMのプランニングや広告クリエイティブの最適化ノウハウを生かし、独自のテレビCMの効果測定ツール「ノバセルアナリティクス」を開発。同ツールを活用した運用型テレビCM支援事業を20年4月から展開してきた。事業成長を受け、22年2月に分社化。サービス成長に向けてさらにアクセルを踏み始めた。

 そのノバセルがサービスの販売戦略を大幅に方針転換した。同社は20年12月に大手広告代理店ADKマーケティング・ソリューションズ(東京・港)と共同で、成果報酬型のテレビCMサービスを始めた。広告主とテレビCMの放送に関わるKPI(重要業績評価指標)を事前に定め、そのKPIの目標が達成できたときのみ、広告運用費が発生するサービスだ。

 テレビCMは少量の放送でもそれなりに広告費が必要になる。小さく打って、データを見て成功の確率を見定めて、投資判断をできるデジタル広告と比べて、出稿経験がない企業にとってはばくちになりかねない。運用型テレビCMの開発で、そうした不安の解消に努めてきた。そこからさらに一歩踏み込み、必ず成果につながるテレビCM支援サービスとして成果報酬型の提供を始めた。

大手広告主に成果報酬は時期尚早

 ただ、ノバセルが支援を得意とするのは、売り上げや利益といった事業の業績評価指標に近いKPIを目標に設定できる業態だ。具体的にはEC事業者やアプリ開発会社など、ネット事業者となる。例えば、EC事業者なら、新規会員登録者数や特定商品の売り上げなどをKPIにし、テレビCMの放送でそれらのデータの変動を分析するといった具合だ。

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