Z世代に人気の音楽ユニットとのコラボレーションや、シズルのないパッケージデザインなど、ハナマルキ(長野県伊那市)が独創的なマーケティングを展開中だ。判断の基準は「面白いか、面白くないか」。その背景には、徹底した差異化戦略があった。
味噌・醸造品大手のハナマルキが、次世代に向けたマーケティングに取り組み、注目を集めている。その一つが、Z世代を中心に人気の音楽ユニット「ずっと真夜中でいいのに。(以下、ずとまよ)」とのコラボレーションによる商品開発だ。同社は2022年3月1日、ずとまよと共同で「スグ旨カップみそ汁」の限定品、「すぐ旨カップみそ汁 揚げなす生姜風味 限定ニラ入り(以下、すぐ旨ニラ入り)」を開発したことを発表した。すぐ旨ニラ入りは、22年4月16日と17日にさいたまスーパーアリーナで開催予定のずとまよの単独ライブの来場者、約3万5000人に配布するという。
ずとまよは、ボーカルで作詞・作曲を手掛けるACAねによる、特定の形を持たないバンドだ。YouTubeのチャンネル登録者数は200万人超、総再生回数は5.6億回。ACAねは顔出ししていないアーティストで、ミュージックビデオはどれもアニメーションで構成されている。すぐ旨ニラ入りのパッケージは、ずとまよのミュージックビデオに登場するキャラクター「にらちゃん」を中心にデザインし、限定品もニラ入りとした。
このプロモーションのために、1分24秒のオリジナルの動画も制作。動画は、8ビットの家庭用ゲームのようなアニメーションと、ゲーム風にアレンジしたずとまよの曲で構成したミュージックビデオで、ファンにとってはおなじみのキャラクターが登場する。映像の後半には、シルエットのACAねが味噌汁を飲むシーンが流れる。商品説明のナレーションや「おみそな~らハナマルキ」というジングルもACAね自ら担当した。ファンを喜ばせる要素がちりばめられており、ずとまよの公式YouTubeでは、わずか10日足らずで23万回以上再生され、700件以上のコメントも投稿されている(22年3月9日時点)。
ファンを中心に大きな話題となっており、一般発売を待望する声もある。だが、その予定は一切ないという。その狙いについて、ハナマルキ取締役マーケティング部長兼広報宣伝室長の平田伸行氏は、「そのほうが印象に残るはず。目的は、ハナマルキとスグ旨カップみそ汁の認知を高めること。ずとまよファンを中心にSNSで拡散されることで、幅広い層への波及も期待している」と話す。
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