インソールやリカバリーウエアなど機能性商材を手掛けるテンシャル(東京・中央)。自社のWebメディア「SPOSHIRU(スポシル)」のデータを基にアスリートらと商品開発を進め、健康意識の高いユーザーをターゲットに顧客を拡大中だ。D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランドの立ち上げから3年で平均成長率440%という強さの理由を中西裕太郎代表に聞いた。
2018年2月に創業し、スポーツ情報を提供するWebメディア「SPOSHIRU(スポシル)」を立ち上げると、ここで吸い上げたユーザーのニーズを基に自社商品を開発。19年8月以降、D2Cブランド「TENTIAL」からインソールやスリープウエア、サンダル、枕などエビデンスを重視した機能性商材を展開しているのがテンシャルだ。
「自社ブランドの開始から3年間で年平均成長率は440%」と語る中西裕太郎代表に、創業丸4年となる22年2月、東京・日本橋の新オフィスで話を聞いた。
新商品の約半数はリピーターが購入
独自のポジションを取れている──。テンシャルの成長理由についてこう語る中西氏。拡大するウェルネス市場では「日常シーンにおける機能性商材」という立ち位置だ。
最初に開発したのはインソールだった。選んだ理由は3つ。「機能性が高いブランド」という認知を得るためには、(アパレルブランドと認知されやすい)ウエアではなく、足回りの商材が適していること。材質が薄く、サイズに合わせてカッティングしていくインソールはシューズに比べてかさばらず、在庫管理がしやすいこと。そして、アスリートや専門家らとスポーツ情報を提供しているオウンドメディア「スポシル」のインサイトや、LINE上で接骨院と連携して足の悩みを相談できるサービス「足の相談所」を展開した際、相当数の足の悩み相談があり、ニーズの高さを実感したためだ。
そこで専門家の知見を得て、足の外側の中央にある「立方骨」を安定させることで動きやすくするインソールを開発すると、自社サイトで販売した。
オンライン上では実際に触ったり、試したりできるわけではない。当初苦労したのは、商品の特徴や良さをどう伝えるかだ。試行錯誤しながら画像や動画の撮り方、スマホのワンスクロールで伝える情報の優先順位を考えるなどした。この点で、社内に体に関する知識の豊富な元アスリートが多い点が奏功した。「何をどう伝えるべきか」を理解した彼らが実際に画面の制作を手掛けるため、改善のスピードも速い。
クリエイティブへのこだわりはWeb広告にも踏襲している。その結果、「健康領域の他の会社よりもコンバージョン率が2~3倍」(中西氏)という。
商品のネーミングにも理由がある。睡眠関連商品の「BAKUNE」シリーズやリカバリーウエアの「MIGARU」など、すぐに機能が分かるように工夫した。
インソールの後、スリープウエア、サンダル、枕などの新商品を続々発売しているテンシャルだが、新商品購入者の約半数はTENTIALブランドのリピーターだ。
リアル店舗で試すことなしになぜ約半数が購入に至るのか。その答えは「数百人のアスリートやビジネスパーソンらとのリレーション」だ。「商品を開発するたびに、アドバイザーとなる(現役・元)スポーツ選手や上場企業、注目企業のトップビジネスパーソンに向け『これ、どうですか?』とヒアリングできる環境を整えている」(中西氏)。メディアを通じて得たユーザーの膨大なデータから、体に対する感度の高い「アスリートやビジネスパーソンが納得する商品」が仕上がる。こうしてできた商品に対する満足度は高く、ファンからの信頼を得ているのだ。
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