ただ指をハムハムするだけのロボットが国内外で話題を集めている。その名も、「甘噛みハムハム」。開発したのは、ハードウエアベンチャーのユカイ工学(東京・新宿)だ。同社は、しっぽが付いたクッション型ロボット「Qoobo」など、斬新なロボットを次々と打ち出し、ヒットを飛ばしている。なぜ今、甘噛みなのか。企画の生い立ちを追うと、ヒットを生む斬新なものづくりの仕組みが見えてきた。

甘噛みハムハムを企画したユカイ工学CMO(最高マーケティング責任者)の冨永翼氏。企画が一度ボツになりかけた中から一転、商品化へ。今回は、ユカイ工学のものづくりの仕組みに迫った
甘噛みハムハムを企画したユカイ工学CMO(最高マーケティング責任者)の冨永翼氏。企画が一度ボツになりかけた中から一転、商品化へ。今回は、ユカイ工学のものづくりの仕組みに迫った

 指を差し出すと、柔らかく繰り返し挟む。機能はそれだけ。そんな変わったロボットが2022年1月に米ラスベガスで開催された世界的な家電見本市「CES 2022」に登場し、国内外で話題を集めている。その不思議なロボット、「甘噛みハムハム」を開発しているのがユカイ工学(東京・新宿)だ。

 同社は、CEO(最高経営責任者)の青木俊介氏が07年に創業。「ロボティクスで、世界をユカイに。」をビジョンに掲げ、ファミリー向けコミュニケーションロボット「BOCCO」「BOCCO emo」や、しっぽの付いたクッション型ロボット「Qoobo」など、一風変わった“愉快な”ロボットを開発してきた。

Qooboはなでるとしっぽを振る不思議なロボット。QooboとミニサイズのPetit Qooboを合わせて、販売3万4000台(匹)を超えるヒットに
Qooboはなでるとしっぽを振る不思議なロボット。QooboとミニサイズのPetit Qooboを合わせて、販売3万4000台(匹)を超えるヒットに

 BOCCOシリーズ(BOCCO emo含む)は1万5000台以上、さらにQooboシリーズ(Petit Qoobo含む)は既に3万4000台(匹)以上も販売するなど、スマッシュヒットを連発。特にQooboは熱狂的なファンも少なくない。SNSなどではまさにペットのように愛する投稿が続出。ユカイ工学が開催したファンミーティングには応募が殺到し、参加者を抽選で選ばざるをえない状況になったほどだ。

 そこに来て新開発をしたのが、冒頭の甘噛み専用ロボット。機構は極めて簡単で、差し込んだ指に反応し、上唇と下唇に該当するパーツが動いて挟むだけ。この一連の動作を行うモジュールを「ハムリングシステム」と名付け、これを入れることで様々なぬいぐるみを甘噛み対応にできるといった仕組みだ。

独自開発の甘噛みユニットをぬいぐるみに入れると甘噛みハムハムになる
独自開発の甘噛みユニットをぬいぐるみに入れると甘噛みハムハムになる

 まず第1弾として、りぶはあと(東京・中央)の「ねむねむアニマルズ」とコラボレーションしたモデルを展開。22年3月8日からクラウドファンディングがスタートしている。

商品化第1弾はりぶはあととコラボ
商品化第1弾はりぶはあととコラボ

なぜ、甘噛み特化型ロボットを開発したのか

 ソニーの「aibo」やGROOVE X(東京・中央)の「LOVOT」など、最新のAI(人工知能)・ロボティクス技術を注ぎ込んだロボットが話題を集める昨今において、甘噛みハムハムやQooboなどは正直、高性能でもなければ、最先端技術のショーケースでもない。ただ、消費者の心を打つ。ではなぜ、こんな斬新なロボットが生まれてくるのか――。その秘密はユカイ工学の独自の企画・開発手法にある。

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