ファッションブランドのAMBUSH(アンブッシュ、東京・渋谷)が、NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)事業を開始した。2022年2月にNFTアイテムを発売、3月14日には独自のメタバース「AMBUSH SILVER FCTRY(アンブッシュ シルバーファクトリー)」も開始する。Web3時代を見据えた新しいファッションビジネスの芽吹きが、国内でも広がりつつある。

AMBUSHが22年2月に発売したNFTアイテム「POW! “Reboot”(パウ! リブート)」。NFTマーケットプレイスの「OpenSea(オープンシー)」で取引されている
AMBUSHが2022年2月に発売したNFTアイテム「POW! “Reboot”(パウ! リブート)」。NFTマーケットプレイスの「OpenSea(オープンシー)」で取引されている

 米RTFKT(アーティファクト)が2021年2月末、10代のNFTアーティストとコラボしたバーチャルスニーカーを発売し、600足がたった7分で完売になったとして話題になった。売り上げは日本円換算で3億3000万円以上。アーティファクトは20年に創業したばかりのスタートアップ。21年12月には、スポーツ用品の米ナイキがアーティファクトを傘下に収めたと発表し、これもネットを騒がせた。

 海外でにわかに広がりつつあるNFTファッションアイテムのブームが、いよいよ日本でも広がり始めた。AMBUSHが22年2月14日に発売したのは、指輪型アクセサリーの「POW! “Reboot”(パウ! リブート)」。創業者であるVERBAL(バーバル)氏と妻でデザイナーのYOON(ユン)氏が08年に発売し、ブランド立ち上げのきっかけとなったアイテム「POW!」をデジタル化したものだ。

 2022個のPOW! “Reboot”を0.15イーサリアム(暗号資産〈仮想通貨〉の1つ)で売り出した。開始から2分ほどで売り切れたという。仮想通貨は値動きが激しいため、厳密な試算は難しいが、1億円ほどを売り上げたことになる。既に二次流通も広がっており、NFTマーケット「OpenSea(オープンシー)」では、発売から20日あまりで、POW! “Reboot”を売り買いする約1000回の取引が成立した。

NFTで価値を可視化

 なぜ実際には身に着けることができないスニーカーや指輪がこれほど売れるのか。VERBAL氏は、その背景ついて「希少価値の高いアイテムは、リアルかバーチャルかを問わず『資産』になる」からだと説明する。

アーティストでありAMBUSHのCEO(最高経営責任者)を務めるVERBAL氏。音楽グループ「m-flo」、ラップグループ「TERIYAKI BOYZ」、クリエイティブユニット「PKCZ」などのメンバーとして活躍。カニエ・ウエストなど大物海外アーティストとも交流が深い。2008年にファッションブランド「AMBUSH」を立ち上げる。16年にはブランド初となるショップを東京・渋谷にオープンした
アーティストでありAMBUSHのCEO(最高経営責任者)を務めるVERBAL氏。音楽グループ「m-flo」、ラップグループ「TERIYAKI BOYZ」、クリエイティブユニット「PKCZ」などのメンバーとして活躍。カニエ・ウエストなど大物海外アーティストとも交流が深い。2008年にファッションブランド「AMBUSH」を立ち上げる。16年にはブランド初となるショップを東京・渋谷にオープンした

 例えば、高級ブランドの服やバッグの所有者は「良いものを手に入れた」という満足感や、周囲から羨望の目を集めるといった優越感を得る。それに加えて、流通数の少なさからプレミア価値がつくこともある。品質が高いだけでなく、デザイン性など純粋なファッションとしての魅力に加え、資産価値もある。NFTは、この資産価値の部分をデジタルの世界に持ち込み、データとして可視化できるようにした仕組みといえる。

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