日立製作所が小売業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速すべく、極小店舗を無人化するシステムを公開した。今回開始した実証スペースは、社内の「オフィスグリコ」を活用したもの。顔認証を済ませれば手ぶらでお菓子が買える。1個わずか100円の商品の販売スペースを、あえてDXによって無人化する狙いはどこにあるのか。
小規模店に特化、日立がグループの技術を結集
「好きな商品を手に取って、売り場を離れれば決済完了。売り場スペースに入る前にモニター前の顔認証は必要ですが、何を買うか迷わなければ、歩きながら商品を取って立ち止まらずにショッピングをすることも可能です」――そう話すのは、日立製作所金融システム営業統括本部事業企画本部Scale by Digital推進室の西本友樹氏。ここは日立の事業所内にある小型無人店舗サービス「CO-URIBA(コウリバ)」の実証現場。といっても、見た目はグリコチャネルクリエイト(大阪市)が展開する置き菓子サービス「オフィスグリコ」だ。
人手不足や3密回避などで無人店舗が増えつつある。だが、購入された商品の特定に複雑なシステムが必要だったり、キャッシュレス支払いなどで利用者に面倒な操作を要求したりすることも少なくない。一方、こちらは小売りのデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速すべく、日立がグループのさまざまな技術を結集して小規模店舗に特化したシステムを組んでおり、利用者の購入方法もシンプルというのが特徴だ。利用者は顔認証を済ませれば、商品を選んでその場から立ち去るだけで、何もなくてもクレジットカードによる決済が完了する。
今回公開された買い物の流れはこうだ。利用者は、まず顔認証に使う生体情報とクレジットカード情報を事前に登録する。以降は、顔認証によって売り場に入ったことが記録される。
今やスマホにも搭載されている顔認証だが、CO-URIBAで使われている技術は新型コロナウイルスの感染拡大以降に開発されたものだけに、こんな便利な機能を搭載している。
「マスクをしたままの顔認証ができるようになっています。また会社などでの利用を考えると、マスクをしていない人が利用するほうが問題。そこで、マスクなしの顔認証は通らない仕組みです」(システム開発を担当した日立LGデータストレージ開発本部Software開発Teamの市川紀元氏)
こうして利用者が売り場に足を踏み入れると、天井からの高度な3Dセンサーがその動きを認識。利用者が手を伸ばした場所に加え、棚に仕込まれた重量センサーで、棚から取り出した商品(=手に取った商品)が特定される。これらのセンサーを使うことで、一度手にした商品を棚に戻す……といった利用者の不規則な動きも判別可能になった。売り場を離れると自動的にクレジットカードによる精算が行われ、スマホにその結果が届くようになっている。
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