岸田文雄首相の肝煎り政策として注目を集める「デジタル田園都市国家構想」。注目すべきは、新たな街づくりの中心概念として、「ウェルビーイング(心身の健康や幸福)」が追加されていることだ。住民のウェルビーイングを測定・評価し、街づくりに生かしていくという、世界で類を見ない取り組みが始まろうとしている。

(写真/Shutterstock)
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 岸田文雄首相の肝いり政策として注目を集める「デジタル田園都市国家構想」。リモートワークや遠隔教育、遠隔医療といったデジタル技術を広く活用することで、都市と地方の格差を埋めようというものだ。これまで日本各地で推進されてきたスマートシティやスーパーシティプロジェクトの“間口”を広げ、デジタル化による地域課題解決を目指す。

 今回のデジタル田園都市国家構想で中心概念として新たに加わったのが、「ウェルビーイング」だ。2021年11月に開催された第1回デジタル田園都市国家構想実現会議で牧島かれんデジタル相は、「『心ゆたかな暮らし』(ウェルビーイング)と『持続可能な環境・社会・経済』(サステナビリティー)を実現」などを目指すべきものとして挙げた。具体的な取り組みとしては、「地域ごとにウェルビーイング指標を定期的に測定、KPI(重要業績評価指標)を設けて恒常的に改善」することが示されている。

デジタル田園都市国家構想でウェルビーイングの指標活用がうたわれている(画像/デジタル庁資料より)
デジタル田園都市国家構想でウェルビーイングの指標活用がうたわれている(画像/デジタル庁資料より)

 実は、このウェルビーイング指標は、一般社団法人スマートシティ・インスティテュート(SCIJ)が開発している「リバブル(暮らしやすさ)ウェルビーイングシティ指標」が採用される予定だ。「すでにデジタル庁と全国の自治体への導入に向けて準備を進めている」(SCIJ専務理事の南雲岳彦氏)という。これからの街づくりのベース指標となることは間違いないだろう。

 では、リバブルウェルビーイングシティ指標とは一体どんなものか。南雲氏にインタビューを行った。

テクノロジーありきのスマートシティに疑問符

――まずSCIJはどんな組織か。

南雲岳彦氏(以下、南雲) スマートシティの拡大と高度化を推進するためのナレッジ・産官学民連携プラットフォームとして、日本経済新聞社と、私が所属している三菱UFJリサーチ&コンサルティング(東京・港)が中心となって19年に設立した非営利団体だ。

 リバブルウェルビーイングシティ指標の開発には、SCIJのエグゼクティブアドバイザーに名を連ねる専門家の協力を得ている。例えば、幸福学の研究で知られる慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授や、京都大学こころの未来研究センターの広井良典教授、内田由紀子教授、公益財団法人Well-Being for Planet Earthの石川善樹代表理事などだ。

――なぜ今、街づくりにウェルビーイングの視点が必要とされるのか。

南雲 街づくりにおける「人間中心主義」を明確化することにある。これまでのスマートシティプロジェクトは、IoTセンサーや自動運転、ドローン、スマートビルディングなど、テクノロジー先行型がほとんどだった。テクノロジーありきに陥ることで、恩恵を受けるはずの住民の意思とはかい離していた。

 そこで改めて住民起点、人間中心ということが見直されるべき時にある。テクノロジーを導入することで、住民はどのように暮らしやすくなるのか、本当に幸福になるのか。目に見える形で伝える仕組みが求められている。それが指標作りの発端だ。

 より大きな流れで言うと、世界ではGDP(国内総生産)が上昇する一方で、必ずしも市民の幸福度が高まっていない現状があり、GDP以外の尺度の必要性が叫ばれている。それと時を同じくしてデジタル化が進展し、様々なことを可視化できるようになってきた。この2つの流れが融合する接点が、ウェルビーイングだ。

――そもそもウェルビーイングとは、個人またはグループが身体的、精神的、社会的に良好な状態を意味する概念で、主観的な要素が多く含まれる。これをどのように指標化するのか。

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